バードウォッチャーが観る日本美術

皆さんこんにちは。緑和堂京都本店の秦です。

今回はバードウォッチングを趣味としている私が、他のスタッフとは違った視点からお品物をご紹介致します。

日本の美術品には多くの野鳥が描かれているのはご存知でしょうか。

普段から目にしている美術品でも描かれているモチーフが何かまで説明することは意外と少ないのですが、何が描かれているかを知る事で作者の作品に込めた意図などが見えることもあります。

今回は京都店に保管されている山口華楊 作『紫木蓮』(木版画)を見ていきましょう。

 

この作品は咲きはじめた紫木蓮に青い鳥がとまる姿が描かれています。

 

この鳥は「オオルリ」という鳥で、日本には春に渡ってきて繁殖し秋には東南アジアへ渡っていく夏鳥です。

見た目は美しい青色をしており、声も日本三鳴鳥にも数えられるほど美しくさえずる鳥で、春になるとオオルリの飛来を楽しみにしている野鳥ファンも多いです。

 

 

紫木蓮は3月の終わりから4月の始め頃に花が咲く樹で、寒さが続いて咲く時期が遅くなった年であれば、ちょうどオオルリの渡りの初期と重なります。またその頃は平地の緑地公園などでも観察できることから、公園などの植栽に多い紫木蓮との組み合わせも楽しめそうです。

動物や野鳥を沢山描いてきた山口華楊も家の近くの公園でこの花とオオルリが見られるかを楽しみにしていたのかも知れません。