鼈甲（べっこう）とは、熱帯棲のウミガメの1種でおもに南方の海域やカリブ海、インド洋の海域に生息している生息しています。日本近海でみることが稀なウミガメの一種タイマイの甲羅の加工品で、半透明と黒褐色のまだらがある甲羅と爪、そして腹甲とを巧みに加工、細工し、各種の装飾用具として作られたものをべっ甲（鼈甲）細工と呼んでいます。色は半透明で、赤みを帯びた黄色に濃褐色の斑点があり、黄色の部分が多いほど価値が高いといわれています。

べっ甲細工は、もともと中国の技術で前漢の武帝が設置した楽浪郡の遺跡から、べっ甲の櫛が出土しており、また万里の長城で名高い秦の始皇帝の王冠の一部がべっ甲で装飾されていたといわれています。日本における歴史はかなり古く、飛鳥・奈良時代にさかのぼといわれています。

べっ甲は琥珀のような飴色と透明感に加え、褐色もしくは黒の独特の模様が入った、大変美しい素材です。また、加工しやすく、熱を加えると簡単に曲げることができる点からも、工芸品の材料として高く評価されています。日本では特に櫛（くし）、簪（かんざし）といった髪飾りの素材として重宝されてきました。また高級メガネの枠としても扱われてきました。そのほかにもペンダント、ブレスレット、イヤリング、カフリンクスなどジュエリー素材として、帯留めや煙草入れ、茶杓（ちゃしゃく）といった伝統工芸品の材料としても珍重されています。

現在べっ甲は、ワシントン条約（絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約）によって国際取引が禁止されています。また国内で取引が許されている素材としてのべっ甲は、財団法人自然環境研究センターに登録し、登録票の交付を受けたもののみとなります。

このように材料が限られているべっ甲製品は今後ますます少なくなり、その意味でも骨董のべっ甲装身具は貴重で、さらに価値が高まっていくものと思われます。プラスチックと思っていたものが実は、べっ甲なんてこともあるかもしれません。お使いになられていない、べっ甲製品がございましたら、是非お気軽にご相談ください。