鵬雲斎(汎叟宗室)は、茶道裏千家の十五代目です。
今作は鵬雲斎が揮毫した茶掛になります。「無事是貴人」は12月(師走)の茶席でよく見られる軸の一つで、「ぶじこれきにん」と読みます。
「無事」という言葉は無事息災などといった四字熟語で聞き覚えがあるかもしれません。実際に、一年の無事を祝して茶席でこの軸を掛けることもありますが、しかし禅語としての意味では異なります。
禅語の「無事」とは、外に向かって求める心を切り捨てた境地を指します。そして「貴人」とは、悟りに至った者のことです。
つまり「無事是貴人」とは、禅語の意味としての「無事」であることが仏という意味になります。
鵬雲斎もそのような心構えを持って、茶道へ臨んだのではないのでしょうか。
今回は作家の知名度に加え、目立つしわやシミが見受けられなかったことから、こちらの評価とさせていただきました。