角偉三郎は、伝統的な輪島塗の枠にとどまらず、現代美術の感性と漆器の原点である「用の美」とを融合させた独自の表現を確立した漆芸家です。
本作は、漆に金粉を練り込み幾重にも塗り重ねたのち丹念に研ぎ出すことで、漆の奥底から鈍い金色の光がほのかに浮かび上がる技法が用いられています。使い込むほどに漆がわずかに透け、内に秘めた金がより深みのある輝きを放つ点も大きな魅力です。実用の器でありながら、時間の経過そのものを美へと昇華させる作品といえるでしょう。
六つ星は晩年作に見られる象徴的なサインであり、還暦を迎えた21世紀初頭、人に踏まれてもなお力強く生きる「根草」への想いを込めて六つ目の星が加えられました。その印は、作家の精神性と成熟した境地を示す重要な要素でもあります。
本作は晩年期の制作である点、さらに保存状態も良好である点を総合的に考慮し、上記評価とさせていただきました。