象牙を処分するには?手放す方法や象牙買取を徹底ガイド

象牙の処分徹底ガイド

自宅の片付けや遺品整理をしていると、思いがけず象牙の置物や印鑑が見つかることがあります。見た目が特徴的で、重みもあり、高価そうに見えるため「処分していいのか迷う」という方は珍しくありません。中には、親や祖父母が昔お土産として買った象牙がそのまま保管されていたというケースもよくあります。

ただ、象牙は一般的な不用品とは違い、法律によって扱いが大きく制限されています。安易に捨てたり、思い付きで売ったりすると、法律に抵触する可能性があります。この記事では、象牙を手放す際に知っておきたい法律のこと、登録制度、売却の可否、売れない象牙の処分ルートなどを、できるだけ分かりやすくまとめました。

価値がつくものかどうか判断できない場合でも、焦らずに読み進めれば、あなたの象牙に合った処分方法が見えてくるはずです。

象牙が「普通に捨てられない」理由

象牙は法律で厳しく規制されている

象牙が特別な扱いを受けるのは、国際的な保護の取り組みが背景にあります。
象牙の原料となるアフリカゾウやアジアゾウは、絶滅の危機にある動物として世界中で保護が進められています。そのため国際的な取引を規制するため、ワシントン条約が定められました。日本もこの条約に加盟しているため、象牙の取り扱いには厳しいルールがあります。

国内では「種の保存法」という法律によって、象牙の売買や流通に関する規制が細かく定められています。個人であっても例外ではなく、売る場合には必ず条件があり、登録制度も用意されています。

自治体のゴミとして捨てられない理由

一般的な不用品は粗大ごみや可燃ごみとして処分できますが、象牙はこの分類に入れられません。自治体の指示にもよりますが、ほぼ全ての地域で象牙のゴミ出しは受け付けていません。
その理由は、自治体側が象牙の真偽や登録票の有無を判断できないためです。万が一、無登録の象牙を自治体が処分した場合、その手続きが違法に関与する形となってしまいます。

つまり、象牙は「捨てる」という選択肢がスタートラインに存在しないと考えておくのが安心です。

無許可での売買が禁止されている

象牙を売る場合には、古物商の許可だけでは不十分です。象牙を取り扱うには、象牙取扱いに関する特別な許可や登録が求められるため、どこでも買い取ってもらえるわけではありません。
フリマアプリや個人間の売買で象牙を手放すと、知らないうちに違法行為に繋がることがあるため、正しいルートを選ぶ必要があります。

あなたの象牙はどのタイプ?処分方法が変わるポイント

象牙と言ってもさまざまな形があります。手元の象牙がどのタイプに分類されるかで、処分方法が変わることがあります。

全形牙・置物・印材などの種類

象牙で最もイメージしやすいのは「大きな牙」の形をした全形牙ですが、それ以外にも多くの種類があります。

  • 象牙そのものの形を残した全形牙
  • 彫刻や細工が施された置物
  • 象牙製印鑑
  • アクセサリー類
  • 箸や小物

形状によって価値の出方も異なり、登録の対象になるかどうかにも違いがあります。

登録票がある場合とない場合の違い

象牙には「登録票」という制度があり、これは環境省が発行する、その象牙が適法に取引できることを証明する書類です。特に 「全形牙(一本象牙)」については、売買・譲渡の際に登録票の所持が法律上必須となっており、登録票がなければ原則として取引を行うことができません。

登録票が添付された象牙は、法的に確認されたルートで流通可能なため、正規の手続きを通じて売却が進められます。象牙素材として扱われる全形牙や彫刻品、印鑑などは、売買に登録票が必須です。

一方、登録票がない場合は、そのままでは売却不可となります。象牙が“部材として組み込まれた登録対象外の製品“などは例外もありますが、後述のように新たに登録票を取得する手続きが必要になります。

もし手元に象牙と黄色い登録票がセットで保管されている場合、その象牙は法的条件が整っているため、比較的スムーズに手放すことができます。

登録票がある象牙の処分方法

ここからは具体的な処分方法に入ります。まずは登録票が手元にあるケースから見ていきましょう。

売却が可能になる条件

登録票がある象牙は、基本的に売却が可能です。ただし、破損や加工の状態によっては買取の対象外となることもあります。
全形牙の場合は特に大きさ・重量が重要で、状態が良ければ高額になることもあります。工芸品の場合は、職人の技術や美術的価値が評価されることが多いです。

専門店で鑑定してもらう流れ

登録票がある象牙を売る場合は、象牙の取り扱いに慣れた専門店で鑑定してもらうのが最も安全です。
鑑定の流れは次のようなイメージです。

  • 事前に種類や大きさを伝える
  • 登録票を確認してもらう
  • 状態をチェックして査定
  • 相場に応じて買取額を提示される

登録票と象牙本体の情報が一致していることが重要です。

どこに売るのが安心なのか

象牙の売却には大きく分けて3つのルートがあります。

  • 象牙の取り扱いがある買取専門店
  • 古物市場
  • オークション

このうち、一般の方に最も現実的なのは買取専門店です。オークションは高値になる可能性もありますが、入札者が適法な許可を持っているか判別しにくいため、慎重さが求められます。

登録票がない象牙の処分方法

登録票がない象牙は、そのままの状態では売却できない場合が多いため、まずは「登録できるかどうか」を確認することから始めます。

まずは登録の可否を確認する

登録票がない象牙でも、一定の条件を満たしていれば新たに登録票を取得することができます。反対に、登録の対象外となるタイプもあります。ここを最初に判断しないと、売却できるのか、処分すべきかの方向性が決まりません。
全形牙、彫刻品、印鑑など、種類によって条件が異なるため、手元の象牙の情報を整理しておく必要があります。

登録票が取得できるケース

登録票の対象となる象牙は、環境省が定める条件に合致したもので、主に次の種類が登録可能です。

全形牙(一本象牙)
→ 売買・譲渡には 登録票が必須。この制度の中心となる対象です。

象牙製の彫刻品(彫牙)
→ 彫りが施されていても「象牙素材として識別できる状態」であれば登録が可能です。

象牙製の印鑑やその他の象牙加工品(素材として扱えるもの)
→ 加工されていても、象牙として独立した形状を保つ場合は登録が必要です。

※一方で、ピアノ鍵盤や将棋駒など、象牙が部材として埋め込まれた“製品扱い” のものは登録対象外です。

これらは規制適用日前に取得したことを示す証明がある場合、申請により登録票を取得できます。
特に全形牙は取引時に登録票が必須なため、登録票の有無が売却可能性を大きく左右します。

登録票の申請手続き

登登録票の申請は、環境省の指定機関(自然環境研究センター)を通じて行います。
書類の記入方法や写真撮影には細かい規定があるため、最初のステップで躓く人も少なくありません。

申請の基本的な流れは次のとおりです。

象牙本体のサイズや特徴を計測・確認

規定どおりに複数の角度から写真を撮影

必要書類(取得経緯の記載・身分証明・補強資料など)を揃えて申請

審査後、問題がなければ登録票が発行される

登録には ぞう科の牙(生牙・磨牙・彫牙)およびその他の器官 1点につき 5,000円の手数料 が必要です。
さらに、規定に沿った写真が撮れず業者へ依頼する場合などは、別途費用が発生することもあります。
登録には費用がかかり、審査期間も一定の時間を要します。急いで売却したい人は、申請期間を考慮して早めに準備することが大切です。

登録不可の象牙はどうする?

登録の対象外と判断された象牙は、売却することができません。この場合は、引取機関に依頼するか、専門業者に相談することになります。
特に小さな加工品や模造品は登録対象外になることが多く、価値が付かないケースも多いです。そのため、無理に売ろうとせず、適切に処分できるルートを選ぶことが安心につながります。

売れない象牙を手放したい場合の選択肢

「登録できない」「価値がつかなかった」場合でも、象牙は家庭ごみとして捨てることはできません。ここからは、売れなかった象牙を処分する方法についてまとめます。

専門の引取機関に相談する

象牙の引き取りを行う団体があり、これらは合法的に象牙を受け取ることができます。登録対象外の象牙はもちろん、状態が悪く価値がつかないものでも受け入れてくれる場合があります。
引取機関は象牙を市場へ流通させるのではなく、適切に管理しながら保管する仕組みが整っています。

寄付という選択肢

教育機関や博物館など、象牙を研究素材として必要とする団体へ寄付するケースもあります。芸術性の高い彫刻品は、展示資料として受け入れてもらえる可能性もあります。
寄付は金銭的な利益を求めない方法ですが、「適切な形で活用される」という安心感があります。

廃棄処理を行う業者に依頼する

象牙は普通のごみとして処分できないため、基本的には許可を持つ処理業者に依頼する形になります。
例外的に手続きが必要になるケースもあるため、不安な場合は専門店や環境省の案内ページを確認すると安心です。
許可のない業者に渡すと、違法な売買に関わるリスクがあるため、業者選びは慎重に行う必要があります。

象牙の価値はどう決まる?知っておくと役立つ基礎知識

手元にある象牙がどの程度の価値を持つのかは、いくつかのポイントで大きく変わります。

価値がつきやすい象牙の特徴

象牙は次のような条件がそろうと、比較的高い評価を受けやすくなります。

  • 大きさがあり重量もある
  • 表面や内部の状態が良い
  • 彫刻の技術が高い
  • 全形牙に近い形を保っている

芸術的価値が認められる工芸品は、象牙の素材価値以上に価格がつくこともあります。

価値がつきにくいケース

反対に、次のような象牙は値段がつかないことがあります。

  • 欠けや割れが大きい
  • カビや変色が進んでいる
  • 模造品の可能性がある

状態が悪い象牙は登録できても価値が出にくく、査定で大きく減額されることがあります。

偽物との見分けポイント

象牙によく似た素材は多く、セルロイドや樹脂といった人工素材のほか、偽物ではないものの、象牙に非常に似た質感を持つ「骨材(ボーン)」が使用されている場合もあります。見た目だけでは判別が難しいことも少なくありません。

見分ける際の参考ポイントとしては、

象牙特有の「シュレーゲル線」など、繊維状の模様が見られるか

断面の模様(年輪のような線)が自然で不規則か

触れたときに自然素材らしいひんやり感や重量感があるか

といったポイントが参考になりますが、素人判断では限界があります。
確実な判別をしたい場合は、象牙の取り扱いに慣れた専門店や鑑定のプロに依頼することが安心です。

遺品整理・生前整理で象牙が出てきたときの対処

遺品や生前整理で象牙が見つかったときに、思い出や背景が分からないまま手元に残ることも多く、気持ちの整理も含めて扱いに悩む方が少なくありません。価値があるのか、登録票はあるのか、そもそもどう手放すのが正しいのかなど、判断に迷いやすい場面が続きます。このような時の注意点や確認するべきポイントを紹介します。

価値が分からない状態での注意点

まず、価値があるかどうかを自己判断で決めつけず、専門家に見てもらいましょう。見た目が地味でも彫りの技術が高いものは、高額な場合があります。

登録票の有無を必ず確認する理由

遺品整理の象牙で最も多いのが、登録票が別の場所に保管されているケースです。
引き出しや古い書類の束の中から見つかることもあるため、処分を決める前に丁寧に探すことが大切です。

それでも見つからない場合は、慌てて処分したり売却を試みたりするのではなく、専門の鑑定士に相談するのが安心です。登録票がなくても登録できる象牙はあり、種類や状態によっては新たに申請できる可能性があります。また、模造品の可能性や登録対象外のケースも考えられるため、自己判断で先に進めてしまうと、後で手続きが複雑になることがあります。

損をしないためにやっておくこと

  • 状態を悪化させないように保管
  • むやみに磨かない
  • 破損部分を接着しない

これらは査定額を下げる要因になるため、余計な手を加えないのが安心です。

象牙を処分するときの注意点

環境省のルールを正しく理解する

象牙の処分は法律と密接に関わっています。インターネット上には古い情報もあるため、最新の基準を確認しながら進めることが大切です。特に登録制度や取引条件は定期的に更新されるため、思い込みで判断しないよう注意しましょう。

無許可業者に注意する

象牙の取り扱いには特別な許可が必要です。許可のない店舗や個人に渡すと、意図せず違法取引に巻き込まれる可能性があります。査定や相談をする際は、象牙の取り扱いに必要な登録や許可を持っているか必ず確認しましょう。

個人売買・フリマアプリの落とし穴

フリマアプリや個人間の取引は便利に見えますが、象牙に関しては避けた方が安全です。相手が適法に象牙を扱える立場なのか確認しにくく、取引が成立した後にトラブルへ発展するリスクもあります。安易に個人売買に流れないよう注意が必要です。

象牙は海外へ持ち出し・持ち込みできない

旅行や引っ越しのタイミングで、象牙を一緒に持って行こうと考える方もいますが、ほとんどの国で持ち込み自体が禁止されています。ゾウの保護は国際的に進められているため、証明書がないまま国境を越えようとすると没収されることがあります。

特に飛行機の手荷物検査や税関では象牙の取り扱いが細かくチェックされます。たとえ自宅の遺品であっても、国際線では理由に関係なく没収されるケースが多く、罰金が科されることもあります。こうした背景から、処分や売却も日本国内で完結する必要があると言えます。

まとめ

象牙は一般的な不用品と異なり、法律や登録制度が複雑に関わるため、処分方法に迷いやすい品物です。
登録の有無によって売却できるかどうかが変わり、登録できない象牙は引取や寄付など別のルートを検討することになります。

焦らなくても大丈夫です。象牙の種類や状態を整理しながら、安全に手放せる方法を選んでいきましょう。

この記事の監修者

株式会社 緑和堂
鑑定士、整理収納アドバイザー
石垣 友也

鑑定士として10年以上経歴があり、骨董・美術品全般に精通している。また、鑑定だけでなく、茶碗・ぐい吞み、フィギュリンなどを自身で収集するほどの美術品マニア。 プライベートでは個店や窯元へ訪れては、陶芸家へ実際の話を伺い、知識の吸収を怠らない。 鑑定は骨董品だけでなく、レトロおもちゃ・カード類など蒐集家アイテムも得意。 整理収納アドバイザーの資格を有している為、お客様の片づけのお悩みも解決できることからお客様からの信頼も厚い。

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