宝石珊瑚とは?造礁サンゴとの違いや種類から価値を決める評価基準まで徹底解説

宝石珊瑚とは?徹底解説

宝石珊瑚とは、深海で育つサンゴの骨軸を研磨・加工して装身具に仕立てたものを指します。同じ「サンゴ」の名で呼ばれていても、南方の海でサンゴ礁を築く造礁サンゴとは、生物学上の分類も暮らす環境も異なります。

本記事では、造礁サンゴとの違いに始まり、種類別の特徴、フやヒといった評価の指標、模造品の見分け方、日々のお手入れ手順まで幅広く解説していきます。

宝石珊瑚と造礁サンゴとの違い

「珊瑚」という言葉から多くの方が連想するのは、浅い海面下に広がる色とりどりのサンゴ礁ではないでしょうか。ところが、宝石として扱われる珊瑚は、サンゴ礁を築く造礁サンゴとはまったく別のグループに属する生物です。この両者の違いを押さえることが、宝石珊瑚の価値を理解するための出発点となります。

宝石珊瑚と造礁サンゴの生態と生息域の違い

造礁サンゴは六放サンゴ亜綱のイシサンゴ目に分類され、体内に褐虫藻という藻類を共生させています。褐虫藻が光合成でつくり出す栄養に依存しているため、太陽光の届く水深数十mまでの温暖な浅瀬に暮らし、石灰質の骨格を積み上げてサンゴ礁を築いていきます。

これに対して宝石珊瑚は八放サンゴ亜綱のサンゴ科に位置づけられ、アカサンゴ・モモイロサンゴ・シロサンゴなどが代表的な種類です。褐虫藻を宿さないため光合成は行わず、ポリプと呼ばれる小さな触手を使ってプランクトンを捕らえます。生息域は水深100〜300m前後の深海で、光の差し込まない冷たい海底の岩場に樹木のような姿で固着しています。骨軸は炭酸カルシウムが緻密に詰まった構造をしており、造礁サンゴのように多孔質ではないため、磨き上げると美しい光沢を放ちます。

ワシントン条約による保護と対象種類

宝石珊瑚の成長速度は極めて緩やかで、骨軸の太さは1年あたり0.3mm程度しか増えないといわれています。宝飾品として使えるほどの太さに育つまでには数十年から100年以上を要するため、いったん採取し尽くしてしまうと資源が回復するには長い時間が必要になります。

このような事情から、宝石珊瑚は国際的な取引規制の対象となっています。絶滅の恐れのある野生動植物の取引を規制するワシントン条約(CITES)では、2008年に中国の提案を受けて、アカサンゴ・モモイロサンゴ・シロサンゴ・ミッド珊瑚(深海珊瑚)の4種が附属書IIIに掲載されました。附属書IIIに登録された種を輸出入する場合には、原産地証明書や輸出許可書といった書類の提出が求められます。なお、黒珊瑚(ウミカラマツ類)については、より規制の厳しい附属書IIに記載されています。

日本国内でも、高知県をはじめとする産地では珊瑚漁が許可制となっており、漁期や漁法、操業できる海域に制限が設けられています。宝石珊瑚を購入する際には、こうした保護の枠組みの中で正規に採取・流通されたものであるかを確かめることが望ましいといえます。

宝石珊瑚の主な種類と色の特徴

宝石珊瑚は種類によって色や質感、樹高(枝の大きさ)が変わり、それぞれにふさわしい用途があります。ここでは代表的な種類ごとの特徴を紹介していきます。

血赤珊瑚と高知県産の特徴

血赤珊瑚は、アカサンゴ(学名:Corallium japonicum)の中でも、とりわけ濃く深みのある赤色を帯びたものに与えられる呼称です。血のような赤、あるいは「オックスブラッド」と表現されることもあり、宝石珊瑚の中で最上級の評価を受ける種類として知られています。

血赤珊瑚の主な産地は日本近海であり、特に高知県沖の土佐湾から足摺岬、室戸岬にかけての海域が有名です。高知県での珊瑚漁は江戸時代後期に始まったと伝えられており、明治時代以降に本格的な産業として発展しました。現在も高知県は日本随一の宝石珊瑚産地であり、原木の入札から加工、販売までを一貫して担う産業が根づいています。

高知県産を中心とした土佐沖の血赤珊瑚には、次のような特徴が挙げられます。

  • 赤色が濃く均一で、光を当てても色むらが目立ちにくい
  • 骨軸の質が緻密で、研磨すると強い光沢が現れる
  • 骨軸の中心に「フ」と呼ばれる日本産特有の白い芯が通っている(※加工や評価における詳細は後述)
  • 樹高が比較的小さく、大玉や太い枝の原木は希少価値が高い
  • 色の深さゆえに、小さなルースであっても高値で取引される

血赤珊瑚は成長が遅いうえに、濃い赤色をまとうものは全体のごく一部に限られるため、市場に出回る数量が少なく、価格も他の種類より高くなる傾向があります。

彫刻品に用いられる桃色珊瑚

桃色珊瑚(モモイロサンゴ、学名:Pleurocorallium elatius)は、淡いピンクから赤みを帯びたオレンジ系まで、幅広い色調を持つ種類です。とりわけ全体に均一な淡いピンク色を呈するものは「ボケ」と呼ばれ、海外では「エンジェルスキン」の名で珍重されています。

桃色珊瑚は宝石珊瑚の中でも樹高が大きく、枝の太い原木が採取できる種類です。緻密な質感と大ぶりなサイズを生かして、日本では古くから帯留めや根付、置物などの彫刻品や細工物に用いられてきました。高知県では珊瑚彫刻が伝統工芸として発展しており、花や龍といった題材を立体的に彫り込んだ作品が今も制作されています。主要な産地は高知県沖、鹿児島県の奄美諸島周辺、沖縄近海、台湾沖などです。

白珊瑚や黒珊瑚などその他の種類

血赤珊瑚や桃色珊瑚のほかにも、装飾品として活用される珊瑚には次のような種類があります。

  • 白珊瑚(シロサンゴ、学名:Pleurocorallium konojoi):東シナ海や五島列島沖、沖縄近海、台湾沖などで採取されます。全体が白色で、部分的に淡いピンクの斑が入るものも見られます。数珠や仏具、和装小物などに用いられてきました。
  • 地中海珊瑚(紅珊瑚、学名:Corallium rubrum):地中海沿岸で採取される種類です。明るく鮮やかな赤色が持ち味で、イタリアなどで加工されヨーロッパの宝飾文化を長く支えてきました。日本産のアカサンゴと異なりフが入りません。
  • 深海珊瑚(ミッド珊瑚):ハワイ・ミッドウェー諸島近海の水深1000m前後で採取されます。白地にピンクの斑が入るものが多く見られます。
  • 黒珊瑚(ウミカラマツ類):ハワイ沖や沖縄近海に分布しています。サンゴ科ではなくウミカラマツ目に属しており、骨軸はタンパク質を主成分とするため質感が大きく異なります。研磨すると漆器のような黒い光沢を放ち、ハワイでは州の宝石に指定されています。

宝石珊瑚の評価基準

宝石珊瑚の価値は、色・キズの有無・サイズという3つの観点から総合的に判定されます。ダイヤモンドのように統一された国際規格は存在しないものの、産地や加工業者の間で共有されている評価の目安があります。

色味の濃さとフの有無

宝石珊瑚の評価において最も重視される要素は色です。同じ種類であっても、色が濃く、なおかつ全体に均一であるほど高い評価を受けます。血赤珊瑚では深く濃い赤色が、桃色珊瑚では斑のない均一なピンクが理想とされ、色むらや白い部分が交じると価値は下がります。

ここで問題になるのが「フ」です。フとは、日本産のアカサンゴやモモイロサンゴの骨軸中心部に走る白色の芯のことを指し、天然の宝石珊瑚であることを示す証でもあります。フは生物としての構造上、必然的に存在するものであり、フがあること自体は欠点ではありません。ただし、製品の表面にフが現れると色の均一性が損なわれてしまうため、加工の段階でフを裏面や留め具に隠れる位置へ回すのが基本となります。

丸玉の場合はフが見えない位置に穴を通し、リングやペンダントのルースでは台座と接する面にフが来るように研磨します。表面にフが見えないよう仕上げられているかどうかは、加工技術と品質を判断するうえで欠かせない基準です。

表面のキズやヒと虫食いの状態

宝石珊瑚は生物由来の素材であるため、天然のキズを含んでいることがあります。代表例が「ヒ」と「虫食い」です。

ヒとは、珊瑚の表面や内部に確認できる細いひび割れのことです。深海の圧力から引き揚げられた際や、乾燥に伴って生じるもので、細かなヒであればある程度は許容されるものの、大きなヒや目立つ場所にあるヒは評価を下げる要因となります。

虫食いは、珊瑚が海底で生きている間に海綿類や穿孔性の生物によって骨軸が浸食され、空洞になった箇所を指します。小さな穴や凹みとして表面に現れ、加工の段階で削り取れないものは製品価値に影響を及ぼします。

現物を確かめる際は、次のポイントを重点的に観察します。

  • ペンライトなどの強い光源を斜めから当て、表面に走る細かなヒ(ひび割れ)の有無を確かめる
  • 10倍ルーペを用いて、裏面や穴の周辺に肉眼では見えにくい微小な虫食い穴がないか点検する
  • 光を透過させて内部を透かし見し、白濁や深部に及ぶ亀裂が隠れていないか確認する
  • 凹みや穴が不自然に平滑になっていないか観察し、樹脂等による充填処理の有無を見極める
  • 研磨ムラによる細かな欠けや歪みが生じていないか、輪郭の滑らかさをチェックする

ヒや虫食いが少なく、表面が滑らかに磨き上げられているものほど高品質と見なされます。

サイズと重量を示す単位の匁

宝石珊瑚の取引では、重量の単位として「匁(もんめ)」が現在も広く用いられています。匁は日本の伝統的な尺貫法の単位で、1匁は3.75gに相当します。真珠の取引でも使われる単位であり、珊瑚の原木や丸玉、ルースの価格は匁あたりの単価で示されるのが通例です。

宝石珊瑚においてサイズと重量が重要な評価要素となる理由は、その成長速度が極めて緩やかであるためです。骨軸が1年に0.3mmほどしか太くならないことを踏まえると、直径10mm以上の丸玉が採れる枝は数十年以上の歳月を経たものになります。大きく厚みのある原木ほど採取される機会が少ないため、同じ品質であればサイズが大きくなるほど匁あたりの単価は上昇します。

また、丸玉の場合は直径を「厘(りん)」や「分(ぶ)」で表す慣習も残っており、大きさと重量の両面から希少性が判断されます。色やキズの評価と組み合わせて、最終的な価値が決まる仕組みとなっています。

なお、近年の宝石珊瑚市場では、アジア圏(特に中国)を中心とする富裕層の需要拡大や、採取制限による供給量の減少を背景に、大玉の血赤珊瑚をはじめとする高品質な原木の取引価格が高騰傾向にあります。かつて日本国内で流通していたヴィンテージの帯留めやかんざしなどが、素材としての希少価値から国内外で再評価されるケースも増えています。

天然の宝石珊瑚と模造品の判別方法

市場には天然の宝石珊瑚を模した模造品(偽物)も流通しています。購入時のトラブルを避けるためにも、代表的な偽物の種類と天然品との見分け方を正しく理解しておくことが重要です。

プラスチックや練り物との違い

宝石珊瑚の模造品として代表的なのは、樹脂やプラスチックを珊瑚色に着色したもの、ガラス製のもの、そして「練り珊瑚」と呼ばれる珊瑚の粉末や貝殻の粉を樹脂で固めたものです。加えて、海竹(ウミタケ)といった別種のサンゴを赤く染めたものも見受けられます。

天然の宝石珊瑚には、生き物として成長する過程で刻まれた特徴が残されています。表面を拡大して観察すると、木の年輪や木目のような細かな線模様(成長線)が確認でき、模造品にはこうした自然な模様がありません。また、炭酸カルシウムを主成分としているため、触れるとひんやりとした冷たさが伝わり、樹脂やプラスチックの温かみのある感触とは明らかに異なります。

天然の宝石珊瑚 プラスチック・練り物
表面の模様 木目のような細い成長線がある 模様がない、または均一な斑点
触れたときの温度感 ひんやりと冷たい 温かみがあり、すぐに体温に馴染む
重さ 同サイズの樹脂より重い 軽い
色の状態 微妙な色の濃淡がある 均一すぎる、または着色が表面だけ
フの有無 日本産は白いフが見られることが多い 基本的にない
硬さ モース硬度3.5前後 樹脂は柔らかく傷がつきやすい

ただし、精巧に仕上げられた練り珊瑚や染色品については、目視だけで判別するのが難しいケースもあります。

鑑定書の確認

目視や手触りによる判別には自ずと限界があります。とりわけ表面だけに染色を施したものや、天然珊瑚の粉末を用いた練り物は、素人が見抜くのは容易ではありません。

客観的に品質を確かめたい場合には、専門機関が発行する証明書を確認するのが確実です。宝石珊瑚のような色石については、素材が天然か人工か、染色などの処理が施されているかを判定した「鑑別書」が発行されます。一般には「鑑定書」と呼ばれることもありますが、厳密には鑑定書はダイヤモンドの品質評価に用いられる書類であり、珊瑚の場合は鑑別書を確認します。

購入時には次の手順で確認していきましょう。

  • 商品に鑑別書(あるいは販売店が発行する品質証明書)が付属しているかを確認する
  • 発行元が宝石鑑別の専門機関であるかを確認する
  • 書類に「天然珊瑚」との記載、および染色や充填などの処理の有無が明記されているかを確認する

高額な商品を購入する際に鑑別書が付属していない場合には、販売店に発行を依頼するか、購入後に専門機関へ鑑別を依頼することも検討してみてください。

宝石珊瑚のお手入れ方法と保管環境

宝石珊瑚は硬度が低く酸にも弱いため、他の宝石と比べて丁寧な取り扱いが求められます。正しいお手入れと保管を心がけることで、美しい色と光沢を末長く維持できます。

拭き取りによる日常の手入れ

宝石珊瑚の主成分は炭酸カルシウムです。炭酸カルシウムは酸に溶けやすい性質を持つため、人の汗や皮脂に含まれる酸、化粧品、香水、酢や果汁などが付着したままになると、表面の光沢が失われたり、白く曇ってしまう原因になります。

着用後は次の手順で手入れを行ってください。

  • 着用後は柔らかい布(メガネ拭きやセーム革など)で乾拭きし、汗や皮脂を丁寧に取り除く
  • 汚れが気になる場合は、水で濡らして固く絞った布で軽く拭き、その後すぐに乾いた布で水分を拭き取る
  • 洗剤や超音波洗浄機、研磨剤入りのクロスは使用しない
  • 香水や化粧品は珊瑚を身につける前に済ませ、直接触れないように配慮する
  • 入浴や水泳、家事の際には必ず外す

汗をかきやすい夏場には、こまめに拭き取ることが劣化を防ぐポイントとなります。

乾燥と直射日光を避けた保管方法

宝石珊瑚は急激な温度変化や過度の乾燥によって、ヒ(ひび割れ)が発生することがあります。また、長時間にわたって直射日光にさらされると退色し、色が薄くなる原因にもなります。

保管する際には次の点に注意しましょう。

  • 直射日光の当たる窓際や、エアコンの風が直接吹きつける場所は避ける
  • 暖房器具の近くなど、極端に乾燥する場所には置かない
  • 他の硬い宝石や金属と接触すると傷がつくため、個別のケースや柔らかい布の袋に入れて保管する
  • 保管場所は温度変化の少ない暗所を選ぶ
  • 長期間身につけない場合でも、定期的に取り出して状態を点検する

ダイヤモンドやサファイアといった硬度の高い宝石と同じ箱にしまうと、擦れただけで珊瑚に傷が入ってしまいます。専用の仕切りを備えたジュエリーボックスを利用すると安心です。

まとめ

宝石珊瑚とは、水深100m以上の深海に生息するサンゴ科の骨軸を加工して仕立てた宝石であり、浅瀬でサンゴ礁を形づくる造礁サンゴとは分類も生態も大きく異なります。成長が極めて緩やかであるため、ワシントン条約の附属書に掲載され、国際取引が規制されている種類もあります。

主な種類としては、高知県沖を中心とした土佐沖で採取される血赤珊瑚、彫刻品として愛用されてきた桃色珊瑚、白珊瑚、黒珊瑚などが挙げられます。価値は色の濃さと均一性、フの処理、ヒや虫食いといったキズの有無、そして匁で表される重量とサイズによって決定されます。

購入の際には成長線や温度感で模造品との違いを確認し、鑑別書などの客観的な書類で裏づけを取ることが肝心です。そして手に入れた後は、着用後の乾拭きと、乾燥や直射日光を避けた保管を習慣づけることで、深海で長い年月をかけて育まれた宝石珊瑚の美しさを次の世代へと受け継いでいくことができるでしょう。

この記事の監修者

株式会社 緑和堂
鑑定士、整理収納アドバイザー
石垣 友也

鑑定士として10年以上経歴があり、骨董・美術品全般に精通している。また、鑑定だけでなく、茶碗・ぐい吞み、フィギュリンなどを自身で収集するほどの美術品マニア。 プライベートでは個店や窯元へ訪れては、陶芸家へ実際の話を伺い、知識の吸収を怠らない。 鑑定は骨董品だけでなく、レトロおもちゃ・カード類など蒐集家アイテムも得意。 整理収納アドバイザーの資格を有している為、お客様の片づけのお悩みも解決できることからお客様からの信頼も厚い。

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