マイセンの種類と代表的なシリーズ一覧 歴史と双剣マークの見分け方

マイセン作品の種類と代表的なシリーズ

マイセンの磁器にご関心をお寄せの皆様、こんにちは。300年以上の深い歴史を誇るマイセンは、その美しい絵柄や卓越した技術で、今もなお世界中の人々を魅了し続けています。

本記事では、多岐にわたるマイセンの種類と奥深い魅力を、プロの鑑定士の視点から丁寧に紐解いてまいります。代表的なシリーズのデザインや年代を見分ける双剣マークの知識、そして大切なお品物を後世へ受け継ぐためのお手入れ方法について解説いたします。

マイセンの基礎知識と歴史

マイセンは、美しい食器であることはもちろんのこと、ヨーロッパの歴史や文化を色濃く反映している存在といえます。ここでは、マイセンがいかにして誕生し、世界最高峰の磁器製作所としての地位を確立したのか、その成り立ちをご紹介いたします。

ドイツで誕生した硬質磁器の歴史

18世紀初頭まで、ヨーロッパの王侯貴族にとって、白く透き通るような東洋の磁器は白い金と呼ばれるほどの憧れの的でした。ザクセン選帝侯アウグスト強王もその魅力に取り憑かれた一人であり、錬金術師を幽閉してまで磁器の開発を命じたという逸話が残っています。

その情熱と執念が実を結び、ヨーロッパ初の硬質磁器が誕生することとなりました。これまでの歩みを簡潔に振り返ってみましょう。

  • 1709年 錬金術師ヨハン フリードリヒ ベトガーが、ザクセン地方の土を用いてヨーロッパ初の硬質磁器製造に成功しました。
  • 1710年 アウグスト強王の命により、マイセン地方のアルブレヒト城に王立磁器製作所が設立されます。
  • 1720年代 天才絵付師ヨハン グレゴリウス ヘロルトにより、多彩な顔料が開発され、絵付けの技術と表現力が飛躍的に向上しました。
  • 現在 ザクセン州立マイセン磁器製作所として、300年前から続く伝統的な技法を厳格に守りながら、現代のライフスタイルに寄り添う新しいデザインも生み出し続けています。

ケンドラーの功績と手描きによる技法

マイセンの歴史を語る上で、天才原型師ヨハン ヨアヒム ケンドラーの存在は欠かせません。1731年に招かれた彼は、平面的な絵付けが主流だった磁器に立体的な躍動感をもたらしました。ロココ様式を取り入れた彼の造形は、磁器を実用品から芸術品の域へと押し上げたといわれています。

また、マイセンの最大の特徴は、設立当初から現在に至るまで手描きの技法を貫いている点です。何年も厳しい修行を積んだマイスターたちが一筆一筆に魂を込めて描くため、同じシリーズであっても花の表情や色合いがわずかに異なります。この手仕事の温もりと職人のこだわりこそが、マイセンが時を超えて愛される理由の一つといえます。

マイセンの代表的な種類と各シリーズの特徴

マイセンには、歴史的な背景や東洋への憧れ、そして職人の遊び心から生まれた数多くの種類が存在します。私たちが査定を行う際にも、シリーズごとに異なる美術的価値や時代背景を深く鑑賞させていただいております。

染付「ブルーオニオン」の特徴

マイセンの代名詞ともいえるのがブルーオニオンです。1739年に誕生したこの絵柄は、中国の染付に描かれていたザクロや桃をモチーフとしています。

当時のヨーロッパではザクロに馴染みがなく、その形が玉ねぎに似ていたことから、このユニークな名前が定着したといわれています。コバルトブルーの染付は高温で焼成されるため色褪せることがなく、その凛とした青さと白磁のコントラストは、どのような食卓にも調和する普遍的な美しさを持っています。

日常使いを想定した「波の戯れ」

現代マイセンを代表するシリーズが波の戯れです。さざ波のように優雅なレリーフが白磁に施されており、シンプルでありながらも光の当たり方で表情を変える洗練されたデザインが特徴です。

アンティークの重厚なマイセンとは趣が異なり、現代のライフスタイルに合わせて日常的に使うことを想定して作られています。美しいフォルムに加えて実用性も高く、和洋問わず様々なお料理を引き立てる器として高い人気を誇ります。

東洋の影響を受けた「インドの華」と「柿右衛門」

18世紀のヨーロッパを席巻したシノワズリの影響を色濃く受けているのが、インドの華と柿右衛門のシリーズです。当時のヨーロッパでは、東インド会社によってもたらされたアジアの品々を総称してインドと呼んでいたため、インドの華と名付けられました。

インドの華は、東洋の陶磁器に描かれた花々を、マイセンの職人がヨーロッパ的な解釈で華やかに再構築したデザインです。緑やピンクの単色で描かれることが多く、余白を活かした構図とエキゾチックな筆致が魅力といえるでしょう。

柿右衛門は、日本の有田焼を忠実に模写したシリーズです。柴垣や竹、虎などが独特の絵具で描かれており、東洋のわびさびとマイセンの硬質磁器が見事に融合した歴史的価値の高い作品です。

金彩を用いたBフォームとXフォーム

宮廷の華やかな生活を彷彿とさせるのが、豊富な金彩を用いたBフォームとXフォームです。これらは19世紀半ば、エルンスト アウグスト ロイテリッツによってデザインされました。

Bフォームはバロック様式の銀器から着想を得ており、重厚で力強い造形にたっぷりと施された金彩が特徴です。ロイヤルブルーやワインレッドなどの鮮やかな釉薬とのコントラストが、圧倒的な存在感を放ちます。Xフォームはロココ様式の影響を受けた優美で軽やかなデザインであり、どちらも高度な金彩技術が求められるマイセンの豊かさを象徴する逸品です。

アラビアンナイトの特徴

現代マイセンの最高峰とも称されるのが、ハインツ ヴェルナー教授によってデザインされたアラビアンナイトです。王様と王妃、空飛ぶ絨毯など、オリエンタルで幻想的な物語の世界が、器の上に緻密に描かれています。

このシリーズの最大の特徴は、24金を用いた特殊な金彩技法と、まるで絵画のような手描きです。職人の高度な技術と豊かな想像力が結集した、まさに美術品と呼ぶにふさわしいシリーズといえるでしょう。

フラワーシリーズと猿の楽団

マイセンの多様性を語る上で、植物や動物をモチーフにした作品も欠かせません。フラワーシリーズは、多種多様な花の絵付けがあり、職人がその日のインスピレーションで一輪一輪を描き上げるため、同じパターンの食器でも少しずつ花の向きや種類が異なります。

猿の楽団は、ケンドラーとライニケが1765年から1766年にかけて造形したフィギュリンの傑作です。貴族の豪華な衣装を身にまとった猿たちが楽器を演奏する姿は、当時の宮廷社会を風刺したユーモアに溢れています。指揮者から様々な楽器奏者まで揃えるコレクション性の高さも大きな魅力です。

マイセンの真贋や年代を見分ける双剣マークの知識

鑑定士がマイセンの査定を行う際、絵付けの美しさや造形だけでなく、器の底面に記された双剣マークを必ず確認いたします。このマークは、単なるブランドロゴではなく、その品物が作られた時代や品質を雄弁に語る歴史の証です。

双剣マークの変遷とボタン剣の特徴

双剣マークは、アウグスト強王の紋章に由来し、1722年頃から導入されました。長い歴史の中でマークの形状は変化しており、これを読み解くことでおおよその製作年代を特定することができます。

  • 初期の双剣マーク 1720年代から見られ、手描きで不揃いな線が特徴です。釉薬の下に描かれる染付が施されています。
  • ドット期 1763年から1774年頃、剣の間に点が描かれるマークです。新古典主義への移行が見られる貴重な時代の作品です。
  • ボタン剣 1850年〜1924年頃のマークで、剣の交差部分が丸くボタンのようになっています。アンティークマイセンの黄金期と呼ばれ、コレクターからの人気が絶大です。
  • ファイファー期 1924年から1934年頃、剣の刃先が鋭く、上に点が付くのが特徴です。
  • 現代の双剣マーク 1934年から現在まで使用されている、シンプルで直線的な剣のデザインです。

1級品と2級品を見分けるスクラッチの意味

双剣マークを見る際にもう一つ重要なのが、スクラッチと呼ばれる引っかき傷の有無です。マイセンでは、厳格な品質基準を満たさなかった品に対して、双剣マークの上にグラインダーで線を入れます。

1級品はスクラッチがない完璧な品質を満たした完品です。対して、マークに線が入っているものは2級品以降となります。傷が入れられているとはいえ、実用上は全く問題がなく、微細な理由であることがほとんどです。これは、マイセンが自らの名誉と品質に対して、いかに妥協を許さない姿勢を貫いているかを示す証といえるのではないでしょうか。

アンティークの真贋判定と証明書の役割

世界的な名窯であるマイセンは、残念ながら古くから数多くの贋作が作られてきました。真贋の判定は非常に奥が深く、マークの形状だけで判断することはできません。

私どもプロの鑑定士は、マークの書き振りだけでなく、白磁の透明度や重量感、絵の具の発色、そして何より筆の運びを総合的に観察し、真贋を見極めております。

証明書については、限定品の場合は、限定証明書がつくことがあります。

マイセン磁器の査定額の傾向

完品と箱付きが査定額に与える影響

マイセンは実用的な食器としてだけでなく、美術品としての価値も大いに期待される製品です。そのため、傷や使用感のない完品であることは、査定において非常に重要なポイントとなります。

また、ご購入時に付属していた専用の箱や証明書などが揃っている状態であれば、コレクションとしての評価も高まり、査定額のアップに繋がります。専用の箱は作品の出自を証明する大切な役割も担っておりますので、捨てずに大切に保管していただくことをおすすめいたします。

※限定品には限定証明書が付くことがあります。

ヒビや欠けがある場合の価値

長年ご愛用されていると、どうしても縁の欠けや細かなヒビが生じてしまうこともあります。一般的な食器ですとお値段がつきにくくなる傷であっても、マイセンの場合は少し事情が異なります。

特にボタン剣の時代の古い作品や、アラビアンナイトのような希少価値の高い製品であれば、多少のダメージがあっても十分な価値が認められるケースがございます。ご自身で価値が下がったと判断されず、まずはプロの目を通してみることが大切です。

専門店による出張査定と高価買取の条件

大切なマイセンを手放される際は、その真の価値と歴史的背景を深く理解している専門店へご相談されるのが安心です。絵付けの細密さや付属品の有無、保存状態、シリーズの希少性といった条件が揃うと、高価買取が期待できます。

多数のコレクションをご整理される場合は、持ち運びによる破損のリスクを避けるために、専門店による出張査定をご利用いただくのも一案です。

マイセン磁器のお手入れ方法

染付や金彩を傷めない洗浄方法

マイセンの美しい染付や繊細な金彩は、職人が丹精込めて手描きした芸術品です。お手入れの際は、これらを傷めないよう優しく扱うことが肝要です。

食洗機や研磨剤入りの洗剤は避け、中性洗剤を含ませた柔らかいスポンジでなでるように洗うようにしてください。洗った後は、水垢が残らないよう柔らかな木綿の布でそっと水気を拭き取ってあげてください。

保管方法とヒビや欠けを防ぐ手順

食器棚に収納される際は、器同士がぶつかってヒビや欠けが生じないよう、適度な間隔を空けて保管することをおすすめいたします。お皿を重ねて収納する場合は、間に薄い紙や柔らかなフェルトを挟むと安心です。日々の愛情を持った扱いが、その輝きを長く保つ秘訣といえるでしょう。

まとめ

本日は、マイセンの歴史や代表的な種類、そして双剣マークから読み解く年代や品質についてお話しさせていただきました。手描きによる絵柄の奥深さや、時代を超えて受け継がれる美術的価値がお伝えできたのであれば嬉しく思います。

お手元にある大切なお品物の価値を知り、適切にお手入れをしながら次世代へと残していく。本記事が、皆さまとマイセンとの素晴らしい歩みを豊かなものにする一助となれば幸いです。

この記事の監修者

株式会社 緑和堂
鑑定士、整理収納アドバイザー
石垣 友也

鑑定士として10年以上経歴があり、骨董・美術品全般に精通している。また、鑑定だけでなく、茶碗・ぐい吞み、フィギュリンなどを自身で収集するほどの美術品マニア。 プライベートでは個店や窯元へ訪れては、陶芸家へ実際の話を伺い、知識の吸収を怠らない。 鑑定は骨董品だけでなく、レトロおもちゃ・カード類など蒐集家アイテムも得意。 整理収納アドバイザーの資格を有している為、お客様の片づけのお悩みも解決できることからお客様からの信頼も厚い。

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