ドームナンシーは19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォー期にフランスのナンシーで活躍した、ドーム兄弟による伝説的なガラス工芸ブランドで、同地に工房を構えたエミール・ガレと並ぶアールヌーヴォーの双璧として名高く、植物を主題とした繊細かつ写実的な表現を得意としました。底部には「Daum Nancy」のエナメル手書きサインが確認でき、真作として申し分のない一品です。
本作はタネツケバナをモチーフとした花文花瓶で、淡い白灰色から温かみのある琥珀色へと移ろうグラデーションの地に、紫の小花と艶やかな緑の葉がエナメル彩によって丁寧に描き込まれています。エッチング(酸化腐食)により背景に奥行きある磨りガラス状の質感が生み出されており、絵画的な奥行きとガラス素地の美しさが見事に調和しています。ドーム作品に特有の、自然光によって表情を変えるやわらかな発色もこの作品の大きな魅力です。
経年による味わいを備えながらも保存状態は良好でかつ人気のある作品のため上記評価とさせていただきました。