加守田太郎は1963年、栃木県益子町に生まれました。
鬼才と呼ばれた陶芸家・加守田章二を父に持ちながらも、当初は陶芸に興味がありませんでした。東京で音響関係の専門学校に通っていましたが、1983年に父が亡くなったため、跡を継ごうと益子に帰郷しました。
母が作った器に絵を付けていくところから修行を始め、1986年の青山グリーンギャラリーでの初個展以降、益子や銀座をはじめとした各地で個展を開催するようになりました。
彼の作品は、ろくろを使わない手びねりでの成型や、筆で塗られた黒・青・緑などの釉薬による独特の濃淡と風合いが魅力です。幾何学模様と筆塗りによる色ムラという一見対極の要素が噛み合い、モダンかつスタイリッシュな印象を与えています。
加守田太郎は、父の要素を引き継ぎつつ独自の世界観を見事に作り出した作家として高く評価されており、多くの人に愛され続けています。
高光崖は石川県の伝統工芸である九谷焼の陶芸家であり、「九谷光崖窯」の初代として知られる作家です。
彼は特に金を用いた上絵付の技法である金襴手(きんらんで)に秀でており、その中でも極細密金襴手の第一人者として有名です。
1945年頃、九谷焼の金襴手技術が発展した石川県小松市高堂趙に窯を開き「すべて手作り手書きを基本とする」という伝統精神を確立し、市販の金粉を使用せず、金箔から独自の金粉を精製するなど徹底した手仕事にこだわったことで知られています。
彼の作品は緻密に施された豪華絢爛な金彩を背景に人物や風景、花鳥などのモチーフが鮮やかな色絵で極細密に描かるのが特徴です。その卓越した技術と柔らかな輝きを放つ金彩の芸術性は、現代の九谷焼においても高く評価されています。
永楽妙全(えいらく みょうぜん)は京都の女性陶芸家です。
千家十職のひとつである土風炉師・焼物師である十四代永楽善五郎(得全)の妻として永楽家を支えた人物として知られています。
明治維新後の茶道衰退期という困難な時代に夫の得全とともに永楽家を支えました。得全が早くに亡くなった後も彼女は家業を守り続け、十五代となる甥・正全の育成に尽力するなど永楽家の存属に大きく貢献した人物です。善五郎の名は襲名しませんでしたが、その技量と作品への評価は非常に高く得全と並び称される存在です。
作風は夫の得全が雄渾な赤絵を得意としたのに対し、女性らしい優美で雅な世界観が特徴とされています。
彼女は三井家などからの支援も受け1914年に三井高棟より「妙全」号を拝領しました。困難な状況下で家業を守り抜き、優れた作品を数多く残した永楽妙全は、十四代の妻としてではなく独立した一人の陶芸家として現代でも高い評価を得ています。
孫 建興は、豊かな釉薬の表現で知られる陶芸家です。
「曜変天目」の研究・復元に取り組んでいることでも知られています。
孫は、1952年に中国福建省で生まれ、20歳頃に磁器工場で働き始めました。
ある時、日本の研究者から分析・復元を依頼された焼き物が「天目」でした。
そして天目の世界に深く魅了され、それから20年以上も天目の研究と復元に取り組むようになります。
1979年には、天目の破片が出土していた窯跡の研究を国から委託されます。その研究の結果、孫建興の作成した天目茶碗は、宋時代のものと同じであると国家より認められ、科学技術認定証を授与されました。
この作品は、のちに中国の国賓への贈り物として献上されています。
また、日本における人間国宝のような称号を与えられており、孫の作品は美術的価値だけでなく、陶芸の歴史や文化を深く理解した上で生み出される高度な研究成果の結晶でもあります。
井戸川豊(いどがわ ゆたか)は、東京都生まれの陶芸家であり、広島大学大学院人間社会科学研究科の教授としても活躍しています。
彼は、伝統的な技法を現代的な感覚で表現する作品で知られ、特に「銀泥彩磁(ぎんでいさいじ)」技法を用いた作品が特徴です。
彼の作品は、身近な野菜や植物をモチーフにしたものが多く、カイワレ大根、トウガラシ、アスパラガス、ホオズキなどが描かれています。これらのモチーフは、彼の作品に瑞々しさと生命力を与えています。
伝統と現代性を融合させた独自の美学を持ち、陶芸の新たな可能性を切り開いています。彼の作品に触れることで、日本の陶芸の深さと広がりを感じることができるでしょう。
古川隆久(ふるかわ たかひさ)は、益子焼の伝統を受け継ぎながらも、独自の感性で彩り豊かな作品を生み出してきた陶芸家です。
東京都に生まれ、東京藝術大学を卒業後、岐阜県の陶磁器試験所や栃木県の塙陶苑で研鑽を積みました。1973年には栃木県益子町に自らの窯を築き、本格的に陶芸活動を開始します。
1976年に、日本工芸会の正会員に認定されます。晩年には画家としても活動しており、表現の幅を広げていきました。
作風の特徴は、伝統的な益子焼の土味を活かしつつ、釉彩による優雅な絵付けで現代性を獲得した造形です。白釉上に描かれる筆跡は静謐である一方、色の勢いや構成には鮮烈な印象が宿ります。
伝統を受け継ぎつつ、若手作家による現代的な作品も多く、暮らしに寄り添う器として幅広い世代に支持されています。