孫 建興

孫 建興は、豊かな釉薬の表現で知られる陶芸家です。
「曜変天目」の研究・復元に取り組んでいることでも知られています。

孫は、1952年に中国福建省で生まれ、20歳頃に磁器工場で働き始めました。
ある時、日本の研究者から分析・復元を依頼された焼き物が「天目」でした。
そして天目の世界に深く魅了され、それから20年以上も天目の研究と復元に取り組むようになります。

1979年には、天目の破片が出土していた窯跡の研究を国から委託されます。その研究の結果、孫建興の作成した天目茶碗は、宋時代のものと同じであると国家より認められ、科学技術認定証を授与されました。
この作品は、のちに中国の国賓への贈り物として献上されています。

また、日本における人間国宝のような称号を与えられており、孫の作品は美術的価値だけでなく、陶芸の歴史や文化を深く理解した上で生み出される高度な研究成果の結晶でもあります。

建窯

建窯(けんよう)は、中国福建省南平市建陽区水吉鎮付近にあった宋代の名窯です。

特に黒釉の茶盞「建盞」の生産で知られ、兎毫盞、油滴盞、曜変盞など、多彩な釉薬効果を持つ作品が生み出されました。これらは日本に伝わった際に「天目茶碗」と呼ばれ、珍重されました。

宋代には、皇室や貴族の間で「闘茶」という茶の品質を競う遊びが流行し、白い茶の泡を際立たせるために黒釉の茶盞が重宝されました。

近年では、建盞の製作技術が復興され、その独特の美しさが再評価されています。

天目茶碗の価値を決める重要な要素の一つに、「模様の美しさ」があります。黒釉のシンプルなものに比べ、禾目(のぎもく)、玳瑁(たいまい)、油滴、曜変といった模様が施された作品のほうが、より高く評価される傾向にあります。しかし、近年に安価で大量生産された、ギラギラと輝く天目茶碗は評価の落ち着く傾向にあります。