黒木国昭は、日本を代表するガラス工芸作家の一人であり、1991年には卓越した技能を有する職人として「現代の名工」に選出されました。代表作の「光琳」シリーズでは、金箔・プラチナ箔やミルフィオリ(小花模様)をガラスに象嵌し、日本美術の琳派(尾形光琳)を独自の感性と技法で表現しています。
本作は、19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォー様式を想起させる「新世紀ロマン」シリーズの一点です。立体的な装飾技法を駆使し、自然をモチーフに朝顔が繊細かつ優美に描かれています。やわらかな色調で彩られた朝顔の花々が、作品全体に生命の躍動感を与え、観る者に深い印象を残します。
花瓶全体に朝顔が施されていることで、まるで植物の生命そのものが器に宿っているかのような、詩的で幻想的な趣を湛えています。
本作は保存状態も非常に良好であり、作者本人による制作であること、また人気の高い意匠である点を踏まえ、今回このような高い評価とさせていただきました。