本作は、鋳金家として知られる秦蔵六が手掛けた「東方朔」の像です。
東方朔(紀元前154年~紀元前93年)は、中国・前漢の武帝の時代に仕えた政治家です。風刺や滑稽な振る舞いで宮廷人を楽しませた人物として知られ、のちに道教の仙人として語られるようになりました。
また、女仙・西王母が持つ、三千年ごとに実るとされる不老不死の果実「仙桃」を盗んで食べ、長寿を得たという伝説が広く知られています。こうした伝承から、東方朔は後世において「不老不死・長寿」を象徴する存在とされ、多くの美術作品の題材として取り上げられてきました。
本作では、片膝を立てて座る脱力感のある東方朔の姿が表現され、右手には仙桃を携えています。穏やかな表情や衣服の皺、髭の質感に至るまで、細部にわたる繊細で柔らかな表現が見どころです。さらに、全体に施された金彩が東方朔の神秘性をいっそう際立たせています。
本作は、名工として知られる作家による作品であることに加え、底部に銘が確認できる点や保存状態などを考慮し、上記の査定結果となりました。