本作は、ビクトリアン様式の「イパーン」と呼ばれる花器です。
ビクトリアン様式とは、1837年から1901年のビクトリア女王在位期間に用いられた美術・工芸などのデザイン様式です。この時代のイギリスは「世界の工場」「太陽の沈まぬ国」と称されるほど飛躍的に繫栄し、文化や産業、芸術が大きく発展しました。
その栄華を象徴するように、豪華絢爛な装飾的で華やかなデザインです。
またビクトリアン様式は、他の様式に比べて63年と長期にわたったため、さまざまな過去のデザインがリバイバルし自由に組み合わせられた時代でもあります。それまでは貴族や上流階級のものだった様々な装飾様式が、一般家庭向けの家具や日用品にも取り入れられて発展していきました。
イパーン(Epergne)とは、テーブルの中央に置き、貴族の豪華な食卓を飾るために作られた、小さなスイーツを盛ったり花を飾ったりするための飾り器です。貯金や節約を意味するフランス語を由来としており、そのまま英語に定着しました。
17世紀末頃のフランス宮廷文化に倣ったヨーロッパ貴族の晩餐会を飾る豪華なイパーンは、招かれたゲストへのおもてなしであり、大切なパフォーマンスの一環でした。
英国貴族が使用していた背景から、シルバーで作られているものが多いですが、まれにガラスや磁器で作られているものもあります。
本作も、淡い黄緑色や乳白色がかった黄緑色、水色のようなカラーガラスで作られている点が特徴的です。下の土台部分は外側から見ると黄緑色に、内側を見ると水色のように、それぞれ乳白を帯びた色合いに見受けられます。
また、上部には淡い黄緑色のガラスが螺旋状に巻き付けられ、美しい装飾が施されています。
その色合いやガラス製という特徴から、涼やかで華やかな印象を与えるデザインとなっています。
本作は、ガラス製という希少性や、保存状態などを踏まえ、こちらの評価となりました。