今回、ご紹介させていただくお品物は、角谷 一圭作の『海老宝珠釜』でございます。
角谷一圭は、日本の釜師であり、茶の湯釜の分野で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された金工家です。室町時代に繁栄し江戸時代初期に途絶えた福岡・筑前発祥の名釜「芦屋釜」の研究や復元に携わり、その造形や文様を現代に再現したことで知られています。
1973年の伊勢神宮式年遷宮においては31面の神宝鏡の制作を担当するなど、国家的な金属工芸事業でも腕を振るいました。釜の鋳型に文様を刻み込む「へら押し」技法を得意とし、伝統的な格調高さと現代的な造形性を融合させた作品を数多く遺しました。
本作は、角谷一圭の代表的なモチーフである「海老」があしらわれた茶の湯釜です。釜の両脇にある鐶を通す鐶付(かんつき)が立体的な海老の姿で造形されており、胴部には「へら押し」(自作のヘラで文様を刻む技法)によって海老の触角や脚の文様が表現されています。また、宝珠形と称されるふっくらと丸みを帯びたフォルムや、出雲たたら和鉄を用いた素材感が特徴となっています。
こちらの作品は、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された作家の作品であることに加えて、自身の代名詞ともいえる「海老」がモチーフであること、保存状態が良好であること、ならびに共箱や金象嵌が施された釜鐶などの付属品が揃っていることから、上記評価額となりました。