大森 金長

大森金長は武者小路千家にて厚く抱えられた錺師で、多くの茶道具を制作しました。

錺師という見慣れない言葉。「かざりし」と読み、金工細工職人を指します。
金属加工の歴史は古く、日本においては出土品などから弥生時代にまで遡ることが可能です。武器や防具としてだけではなく、装飾品としても求められたのは世界共通と言えるでしょう。

日本で生まれたこの錺師は、神社仏閣と強く結びつき、その寺社を装飾するために重用されました。平安時代には銀(しろがね)細工の技術が確立し、鎌倉から戦国時代までの動乱を経て、江戸時代に大きく花開きます。金具や建築物の飾りなどが主でしたが、装飾品の需要に伴って首飾りや耳飾りなども手掛けるようになり、金銀細工師とも呼ばれるようになりました。

茶道は多くの道具を用いる上にその歴史は古いため、御用職人とも言える職人がいます。そんな中の一人として、大森金長は武者小路千家にて腕を大いに振るいました。金長は銀瓶などの銀製品はもちろん、銅の花器などの銅製品など幅広く作品を制作しております。
現在でもその作品には多くのファンがおり、名工の一人と言えるでしょう。

二上 常太郎

二上常太郎は、富山出身の蝋型師です。

伝統工芸の街・富山県高岡市で生まれ、斯界に誇る技術保持者の一人として、銅器を愛しその鋳肌に魅せられ、およそ60年の間創作活動を続けて居られました。作品は鍛え抜かれた技法のたしかさと気品、風格で満ち溢れ、観る者を魅惑してやまぬものがあると賞讃されており、人間国宝級の技法として業界からは高い評価を得ております。

蝋型とは、鋳金技法の一種です。まず、中子と呼ばれる鋳物の中空部を作るために生型と別に使われる鋳型を使い、その表面を蜜蠟と松脂を混ぜたもので覆って原型を作ります。その後粘土汁を混ぜた泥を塗り、乾燥させた後、加熱して蝋を溶かして空洞を作り鋳型とします。あとはこれに溶かした金属を注入し、冷めたら型を壊して完成します。

二上常太郎の主とした製作技法であり、銅製の美術品、花器や仏具といったジャンルで多く作品を残されています。

木村盛伸

木村盛伸は京都の陶芸家です。京都府指定無形文化財保持者に認定されています。

1932年京都の五条坂にて、絵付け職人の木村聖山の三男として生まれます。

都市立美術工芸学校の卒業した後は兄・木村盛和の工房に入ります。そして、のちに鉄釉鉄器で人間国宝となる人物・清水卯一の薫陶を受けます。

その甲斐あってか、盛伸は26歳の若さで日本伝統工芸展にて初入選を果たします。その後も入選を重ね、二年後には日本工芸会の正会員に認定されます。

以降、鉄釉や青磁、灰釉を巧みに用いた壷や皿などの作陶で名声を高めていき、1992年に京都府指定無形文化財保持者に認定されます。

長らく京都を拠点に作陶し続け、伝統工芸会員としても伝統工芸の発展に寄与し続けた盛伸は、間違いなく功労者と言えます。

近年でも日本で展覧会が開催されている他、ご子息の木村展之・木村宜正も活躍しております。京都にいらした際は、どこかで作品をお目にかかることがあるかもしれません。

大坂 弘道

1937年2月20日~2020年9月25日 大坂 弘道(おおさか ひろみち)は日本の木工芸家になり、鳥取県倉吉市出身の重要無形文化財(人間国宝)になります。6番目の木工芸の人間国宝になります。ほとんどの人間国宝の方々は、家業や幼少期の頃からその道の修行に入り、遅くても大学、学校を卒業後に修行しますが、大坂は卒業後しばらく公立学校の教師を務めていた異例の人間国宝になります。美術教師をしながら独学で木工製作を独学で学び、34歳から本橋玉斎、氷見晃堂、竹内碧外らに師事します。大坂の作品は、木工画法を得意とし華麗な装飾が特徴。象牙や水晶、金銀などの材料を象嵌した技法はかなり高度な技法になり、正倉院宝物の復元模造を委嘱される様になります。木工作品で細密な木画技法による木工作「紫檀木画箱」の模造に7年の歳月をかけて取り組みました。「紫檀木画箱」は、細密な幾何文で知られており、幅1cmの文様を描くのに複数の素材からなる細片を30枚も重ねる技法になります。大坂は復元模造の過程で、その技術を蘇らせることに成功した人物になります。

諏訪 蘇山

明治から現在まで続く青磁陶芸の作家である諏訪蘇山。初代が高麗青磁を研究し作りあげた京焼青磁は当代まで受け継がれ、刷毛目や練り込みを用い、より現代的な姿へと進化しました。

初代蘇山は加賀の武士の家に生まれ、公務員・水産業・陶芸家・鋳物師など様々な業種を経験した人物でした。本格的に陶芸の道へ進んだのは1906年で、京都に自らの窯を設け多様な技法を研究しています。大正時代には朝鮮を訪れ、高麗青磁を研究、現地の窯の復興にも助力しました。

4代目となる当代の蘇山は2002年に襲名。漆芸やグラフィックデザインの知識を生かしつつ、女性らしい柔らかな造形で様々な作品を手掛けています。