樋渡 陶六

樋渡 陶六は、繊細な彫刻を施した作品で知られる陶芸作家です。

樋渡は、1913年に愛媛県伊予郡砥部町で生まれました。
砥部工業学校を卒業後、地元の窯元を経て柿右衛門窯に入ります。そこで約20年にわたり彫刻の腕を磨き、のちに独立して白磁の緻密な彫刻を中心に活動を展開しました。特に観音像花瓶などを多く手がけています。

その後も多くの受賞歴を重ね、1983年には山内町重要無形文化財(陶磁器彫刻技法保持者)に指定されました。

樋渡の作品には、白磁だけでなく青白磁も多く見られます。
青白磁は中国を起源とする焼き物で、主に陶石やカオリンを原料とし、素焼きした器に鉄分を含む釉薬を施して焼成します。青磁器は他の陶磁器よりも釉薬を多く用いるため、焼成時に強い負荷がかかって割れやすく、製作が難しいとされます。

伝統を尊重しながら研鑽を重ねる樋渡の姿勢は、後進にとって大きな指標となりました。彼の作品は、澄んだ青磁の美しさと独自の造形感覚によって、今なお多くの人々を魅了し続けています。

井上 康徳

井上 康徳は、白磁を代表する作家の一人として広く知られています。

彫りや釉薬の掛け分けなどの技法を駆使して白磁の表現を追求し、生活の中にとけ込み、見て使って楽しめる器」をテーマに幅広く活躍しました。

1958年、佐賀県有田町にて、人間国宝井上萬二の長男として誕生。
幼少期から白磁に親しみ、その世界に次第に魅了されていきます。

父の跡を継ぐにあたり、井上は「陶芸以外の様々な経験をして、それを作陶に活かしたい。それは大学卒業後でも遅くない。」と考えました。
そして大学卒業後、父からろくろ技法を学び、1983年には「日本伝統工芸展」に初入選。その後も数々の入賞・受賞を重ね、着実に実績を築いていきます。

白磁の美しさに現代的なデザイン感覚を融合させた作品は、「人間国宝の息子」という重圧を超え、独自の魅力を放ちました。
その確かな技術と感性は、国内外で高く評価されています

さらにその情熱は次世代へと受け継がれ、三代目の井上祐希は、ストリートカルチャーと伝統を融合させた新たな白磁表現を切り開いています。