武田秀雄は、日本の漫画家・画家です。
武田は大阪市に生まれ、多摩美術大学大学院彫刻科を修了し、在学中よりグラフィックアートや1コマ漫画の制作を手がけていました。1976年には和彫りの入れ墨を背負った男たちの悲喜劇を描いた『紋紋』で第22回文藝春秋漫画賞を受賞しました。ニューヨークで作品集が刊行されるなど海外進出を進める傍ら、1985年には、武士たちの死闘と虚無を冷徹なアイロニーと豪華な色彩で描いたシルクスクリーン連作『源平』を発表しました。また、野坂昭如『職人百づくし』や阿刀田高『食後の毒薬』の装画・挿絵を担当し、1988年に第17回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しています。1993年にはロンドンの大英博物館にて個展を開き、開館以来初めて漫画家の個展を開いた事例として、国内外で大きな話題となりました。
彼の作品は、暴力、死、エロティシズム、権力といった重厚な題材を扱いながら、不条理とユーモアが交錯する冷徹で知的な表現が特徴です。彫刻科出身ならではの確かな造形把握に基づき、くっきりと力強い黒の輪郭線と、シルクスクリーンによる鮮烈かつフラットな色彩構成を融合させています。さらに、鳥獣戯画や北斎漫画に通じる日本の伝統的な戯画の系譜、浮世絵の武者絵や和彫りの意匠を大胆に引用しながら、幾何学的・装飾的なパターンを緻密に画面へ散りばめることで、古典的な物語性とポスターライクな現代的インパクトを共存させています。
近年では、デンマークのヴァイレ美術館で開催された版画展(『SKABNINGER』展)で代表作『源平』シリーズが展示されるなど、日本の近代版画史や戯画の系譜を継ぐ異才として、ヨーロッパのアートシーンを中心に再評価が進んでいます。
福井欧夏は、現代の具象・写実絵画界を牽引する日本の写実洋画家です。
福井は広島県に生まれ、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、武蔵野美術大学大学院油絵科を修了し、修了制作優秀賞を受賞しました。デザイン科出身ならではの画面構成力や色彩感覚が、後の写実表現の基盤となっています。また、1995年の第71回白日会展に初出品して「白日賞」を受賞して以降、白日会と日展の両公募展を主な舞台として精力的に作品を発表し、数々の賞を重ねて両団体の会員へと推挙されました。光や空気感、モデルの内面までを捉えた詩情豊かな人物画(主に女性像)で高く評価されています。
彼の作品は、写真を使わずに実際のモデルやモチーフを目の前に置いて描く「現場主義(リアリズム)」の徹底と、静謐で詩的な空気感が大きな特徴です。モデルの息遣いやアトリエの空気感、衣服の質感までが画面に表現され、存在感とマチエール(絵肌)を生み出しています。描かれる女性像は、伏し目がちであったり、視線を遠くに向けて物思いに沈んでいたりと自然体で佇んでおり、感情を過剰に主張しない姿が、鑑賞者にモデルの内面性や詩的な情景を想起させます。
現在も白日会会員および日展会員として第一線で活動を続けており、松坂屋名古屋店などの主要百貨店をはじめ、埼玉画廊やギャラリー和田といった画廊、出身地に近い天満屋(岡山・福山)などで定期的に個展を開催しています。
原田泰治(はらだ たいじ) 1940年(昭和15年)4月29日 〜 2022年(令和4年)3月2日(享年81)
長野県出身の画家、グラフィックデザイナーである原田泰治は、失われつつある日本の美しい田園風景やふるさとの原風景を、一筆一筆丹念に重ねる緻密で優しいタッチで描き続けた「素朴画家」です。
1歳で小児麻痺を患い、両足が不自由になりながらも全国を旅して描いた彼の作品は、朝日新聞日曜版での連載「原田泰治の世界」などを通じて多くの人々に知られるようになりました。
彼の描く作品には、登場人物に「明確な顔の表情」があえて描かれていないという大きな特徴があります。また、鳥のように高い視点から見下ろす独特の構図も用いられており、どこか懐かしい泥の匂いや人々の温かい息づかいまで感じられるような不思議な魅力にあふれています。独自の画風に込められたふるさとへの深い愛は、今も見る人の心に静かな癒やしを与えていると言われています。
平凡・陳淑芬は、夫婦で活動を行っている台湾出身のCGイラストレーターユニットです。
平凡(コモン)は1995年、出版社・大塊文化から漫画『夏日之後』でデビュー。イラストの仕事と並行してデジタルコミック『FOCUS』を発表しました。写真のように写実的なタッチと、水彩画のような温かみのある画風が特徴です。
陳淑芬(チェン・シュウフェン)は1991年ごろに挿絵の仕事を始め、1993年に初の作品集『TOUCH』を発表しました。1997年から1998年にかけては平凡とタッグを組み、「色」をテーマにした画集を刊行。日本の大手雑誌にも寄稿し、注目を集めて多くのファンを獲得しました。
現在では、日本で画集の販売のほか、個展も各地で開催しています。
阿部穣は1975年生まれ、東京都出身の画家です。1999年に東京藝術大学デザイン科を卒業後、2001年に同大学院修士課程デザイン専攻を修了。その後3年間、同大学で非常勤講師を務め、現在はフリーランスとして千葉県野田市のアトリエにて精力的に制作活動を行っています。
阿部は、2種類以上の異なる媒体や素材を組み合わせる「ミクスドメディア技法」を用いて作品を制作しています。この技法は1912年頃、ピカソやブラックがコラージュを取り入れたキュビスム絵画が発祥とされています。以降、ダダやシュルレアリスム、戦後のネオ・ダダなどを経て発展し、現代アートにおいても広く活用されています。
阿部は、日本画の伝統的な画材である岩絵の具に、アクリル絵の具、砂、壁材、石などを組み合わせた独自のスタイルを確立しました。繊細で柔らかい色彩表現が特徴で、ARTBOX大賞をはじめ数々の賞を受賞しています。
松原政祐は、人間と自然の共生や命の尊さをテーマに描く日本の洋画家です。
松原は兵庫県神戸市に生まれ、幼少期から絵を描くことを好み、高校生の頃から画家を志していました。武蔵野美術学園卒業後、兵庫県展にて兵庫県立美術館賞を受賞し、その後も行動展新人賞、行動美術賞、行動40周年記念大賞などを獲得しました。また、1988年には《生きるものたち「誕生」》で第1回前田寛治大賞展にて大賞を受賞し、高い評価を得ました。安井賞展への出品や、現代美術選抜展への招待出品なども多数行っています。
彼の作品は、「生きるものたち」を一貫した主要なテーマとしています。若き日の葛藤や困難、命の終わりや死と向き合ってきた実体験に基づき、人間だけでなく動物、鳥、樹木など、あらゆる命の繋がりを描いています。また、油彩画をベースとしながら、絵の具の塗り重ねや削り出し、異素材やコラージュを組み合わせる混合技法を用いています。黄金色、赤褐色、土色などを基調とした重厚な画面(マチエール)を作り出し、時の経過や記憶の深みが表現されています。