歌川 芳藤

歌川芳藤は、幕末から明治時代にかけて活躍した浮世絵師です。

江戸に生まれ、本名を西村藤太郎といいます。特に子供向けの「おもちゃ絵」と呼ばれる浮世絵で名を馳せました。歌川国芳の門下に入り技術を受け継ぎ、歌川派の流れを汲みながらも、独自のユーモアと創意を加えた作風で人気を博し、「おもちゃ絵の芳藤」と称されるほど明治期に至るまで子供たちからの支持を集めました。

作品には紙を切って組み立てられる立体玩具やすごろく、着せ替え人形など、遊びと学びを兼ね備えた要素が多く見られます。さらに、流行病の魔除けとして描かれた「はしか絵」や、文明開化の世相を反映した風俗画なども手がけ、時代の激変を敏感に捉えた作品を数多く残しました。また、猫好きだった歌川国芳の影響もあり、猫をモチーフにしたユーモラスな擬人化絵を数多く発表したことでも知られます。なかでも代表作の『五拾三次之内 猫之怪』は、大小複数の猫たちが絶妙に重なり合って1匹の巨大な化け猫の顔を形作る、彼の卓越したアイデアが活かされた作品として高い評価を得ています。

歌川芳藤は、おもちゃ絵などの制作を通じて子どもたちの娯楽や遊びの文化に貢献し、激変する世相のなかで庶民の日常や暮らしを親しみやすく描いた浮世絵師です。

サクティ・ボーマン

サクティ・ボーマンは、フランスを拠点に活動するインド出身の現代美術作家です。

ボーマンはインド・コルカタに生まれ、1956年に同地の美術学校を卒業後、フランスに渡りパリの国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)で修学しました。イタリア滞在中にルネサンス期のフレスコ画から強い影響を受けており、半世紀以上にわたりフランスに在住しつつ、母国インドとも強い結びつきを保ちながら国際的な活動を続けています。妻はフランス人画家のマイテ・デルテイユ(Maïté Delteil)であり、娘のマヤ・ボーマン(Maya Burman)、姪のジャヤスリ・ボーマン(Jayasri Burman)もそれぞれ美術作家として広く知られています。

彼の作品は、インドの伝統とヨーロッパの古典主義が融合し、現実とファンタジーの境界線を曖昧にするような夢想的な情景を描き出している点が特徴です。油彩とアクリルの反発作用を応用した独自の「マーブリング技法」により、フレスコ画や大理石を思わせる特有の重厚感と質感を生み出しています。主なモチーフには、ヒンドゥー教の神々や精霊、ヨーロッパの道化師(アルルカン)、象や鳥といった動物たち、そして彼自身の家族などが用いられ、現実世界と神話が交差する神秘的な世界観を構築しています。

サクティ・ボーマンは、東洋と西洋の文化を融合させ、独自の技法で『夢と神話の世界』を現出させる画家ともいえます。

永瀬 義郎

永瀬義郎は、大正から昭和にかけて活躍した版画家・画家です。日本の創作版画運動の初期を支えた重要人物の一人として知られています。

永瀬は茨城県に生まれ、白馬会原町洋画研究所で長原孝太郎に学び、その後東京美術学校彫刻科へ進学しましたが、中退しました。その後は京都で日本画も学び、1916年には長谷川潔らとともに、日本初期の創作版画団体「日本版画倶楽部」を結成し、第1回展を開催しました。以降、日本創作版画協会展や春陽会展を中心に活動し、1922年には技法書『版画を作る人へ』を刊行して大きな反響を得ました。さらに1929年には春陽会賞を受賞し、同年に版画研究のため渡欧、「東洋の旅」シリーズを制作するなど、創作版画運動を代表する作家として活躍しました。

彼の作品は、幻想性と詩情を帯びた独特の世界観を特徴としています。特に抒情的な人物表現や装飾性のある画面構成に特色があり、「詩情」「幻想性」「実験精神」を兼ね備えた作家としても評価されています。従来の浮世絵版画のような分業制ではなく、作家自身が構図から彫り、摺りまで一貫して手がけることで、内面的世界や感情を強く反映した表現を追求しました。
 

RoamCouch

RoamCouch(ロームカウチ)は、岐阜県安八町を拠点に活動する日本のストリートアーティストです。

彼は岐阜県に生まれ、本名は小川亮です。緻密なステンシル技法を用いた作品で知られており、日本の浮世絵的感覚と現代ストリートアートを融合させた独自表現によって注目を集めています。幼少期より漫画文化の影響を受けて絵を描き始め、高校卒業後はデザイナーとして活動していました。その後、大病を患った経験を契機に、自身の人生や表現活動を見つめ直し、本格的にアーティストの道へ進んだとされています。

2011年より「RoamCouch」名義で本格的にアーティスト活動を開始し、2014年にはアメリカ・ニューヨークで初の個展を開催しました。また、同年より故郷である岐阜県安八町を中心に無償で壁画を描くプロジェクト、Emotional Bridge Projectを開始し、街中に大型壁画を設置することで、国内外のアートファンの呼び込みを試みています。近年は、美濃和紙を取り入れた作品制作にも取り組んでいます。

彼の作品は、ストリートアートの「ステンシル技法」を高度に発展させ、日本の浮世絵的感覚と融合させている点に特徴があります。本人はこの独自様式を「Neo Ukiyo-e(ネオ浮世絵)」と称しており、50層以上にも及ぶ手切りステンシルを重ねて制作する緻密な手法で知られています。この工程により、通常のステンシルでは難しい滑らかな階調や空気感、奥行き、光の表現を可能にしています。作品によっては制作に数か月を要するものもあるとされ、都市風景、少女像、夜景、星空、廃墟などを題材にした、映画のワンシーンを思わせるノスタルジックな作風も特徴です。

RoamCouchは、緻密なステンシル技法による叙情的かつ幻想的な表現で注目を集める現代ストリートアーティストといえます。

名取 春仙

名取春仙は、明治から昭和期にかけて活躍した版画家・挿絵画家・日本画家です。

名取は山梨県に生まれ、本名を名取芳之助といいます。幼少期に上京し、久保田米僊・久保田金僊らに師事して日本画を学びました。その後、平福百穂の影響も受け、写実性を重視した画風を築いていきます。明治後期には東京朝日新聞社で挿絵画家として活動し、夏目漱石『三四郎』をはじめ、島崎藤村、森田草平、泉鏡花ら多くの新聞小説の挿絵を手がけました。

その後は、江戸時代の浮世絵の役者絵の伝統を継承しつつ、歌舞伎役者を描いた作品で高い評価を受けます。歌舞伎界のスターである市川左團次や、映画界の大スターである大河内傳次郎など、当時の人気役者や俳優を数多く描き、高い人気を博しました。

彼の作品は、役者の外見的な似姿だけでなく、演技の最中に現れる心理や緊張感までも描き出しており、目線や口元、顔のわずかな角度の違いによって、役柄の感情や舞台の空気が伝わるような、従来の浮世絵役者絵に比べてより写実性を強めた表現を取り入れています。また新聞小説の挿絵では、日本画の画風に洋画的な構図を取り入れ、小説の情景や登場人物の心理を印象的に表現しました。斬新かつ風格あるその挿絵表現は、新聞界で『挿絵の革命』と評されました。

名取春仙は、江戸時代の浮世絵役者絵の伝統を近代的感覚で再生した、新版画を代表する作家といえます。

KYNE

KYNEは、物憂げな表情を浮かべたクールな女性像を描くことで知られている日本の現代アーティストです。

彼は福岡で生まれ、デザイン科のある高校で油彩、彫刻、デザインなどを幅広く学びました。大学時代に日本画を学びながら、2006年頃より福岡を拠点に制作活動を開始し、初期はグラフィティやストリートカルチャーを背景に活動していました。街中でのステッカーや壁画表現によって徐々に注目を集め、2010年頃には、現在の代表的作風である「クールな表情の女性像」を描くスタイルを確立しました。

以降は国内外で評価を高め、アパレルブランドとのコラボレーション、CDジャケット、広告ビジュアルなど幅広い分野で活動を展開しています。2017年には福岡で「ON AIR」、2019年には東京に「ON AIR TOKYO」をオープンしました。2020年には福岡市美術館で大型壁画《Untitled》を制作し、2021年には村上隆主宰のKaikai Kiki Galleryで個展を開催するなど注目を集めています。

彼の作品は、1980年代のアイドルや音楽、漫画、レコードジャケットなどの大衆文化や、1990年代のグラフィティ、ヒップホップなどのストリートカルチャーに影響を受けているとされており、平面的で洗練された線描によって構成される女性像は、「KYNE-girl」とも呼ばれています。彼女たちの表情は、見る人それぞれに想像を委ねるような、感情表現を抑えた描写が特徴とされています。

KYNEは、国内のみならず海外からの評価も高く、上海での個展開催や国際的なアートフェアへの参加など、グローバルに活動を展開しています。また、メディア露出が少ない点も特徴の一つとして知られています。

小林 ドンゲ

小林ドンゲ氏は1926年生まれ、東京出身の版画(銅版画)のアーティストです。 特に、「ドライポイント」や「ビュラン」という尖った工具を使って銅の板に直接キズをつけて絵を描く、とても繊細で高い技術が必要な技法を得意としてい …

lack

lackは、主にアニメ調のキャラクターデザインやライトノベルの装画、ゲーム・VTuber関連のビジュアルなどを手がけていることで知られる日本のイラストレーターです。 彼は長野県に生まれ、学生時代からゲーム制作やイラスト制 …

武者小路 実篤

武者小路 実篤(むしゃのこうじ さねあつ)は、白樺派を代表する作家として有名ですが、同時に独自の画風を持つ画家としても知られています。 理想主義的人道主義に基づく文学を展開した武者小路は、美術の方面でも同様に生命への肯定 …

歌川 貞秀

歌川貞秀は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて活躍した浮世絵師です。 歌川は下総国布佐(千葉県我孫子市)に生まれ、本名は橋本兼次郎といいます。歌川国貞(三代豊国)に学んだとされ、歌川派の絵師として文政期頃より挿絵などを …

小林 永濯

小林永濯は、幕末から明治時代に活躍した日本画家・浮世絵師です。 小林は、日本橋の魚問屋に生まれ、幼少期より狩野派の画法を学びました。その後、彦根藩井伊家のお抱え絵師への登用が持ち上がるなど、若くしてその並外れた才能を認め …

手塚 治虫

手塚治虫は、戦後の日本漫画・アニメ界を牽引し、「マンガの神様」と称される漫画家・アニメーション制作者です。 手塚は大阪府に生まれ、幼少期から昆虫採集や映画鑑賞に親しみ、これらの体験が後の創作活動に大きな影響を与えました。 …

酒井 駒子

酒井駒子は、日本の代表的な絵本作家・イラストレーターです。 酒井は兵庫県に生まれ、東京藝術大学美術学部油画科を卒業後、テキスタイルデザインなどを経てフリーのイラストレーターとなり、1998年に『リコちゃんのおうち』で絵本 …

ジョルジュ・ビゴー

ジョルジュ・ビゴーは、日本の明治期を主題とした風刺画で知られる画家・風刺画家です。 ビゴーはフランス・パリに生まれ、国立美術学校にて絵画や銅版画を学び、版画や挿絵の分野で活動を開始しました。1882年には日本に来日し、陸 …

コヤマ シゲト

コヤマ シゲトは、主にアニメ・ゲーム分野におけるメカニックデザインやコンセプトデザインで知られている日本のイラストレーターです。 コヤマは東京都に生まれ、1999年にガンダム・トリビュートマガジン『G20』第6号にイラス …

フカヒレ

フカヒレは、透明感のある繊細な美少女表現で知られている北海道出身の日本のイラストレーターです。 柔らかな光の表現、優しく繊細なキャラクターの描写力に定評があり、ライトノベル挿絵・ゲーム・VTuberデザインなど幅広い分野 …

中原 淳一

中原淳一は、昭和初期から戦後にかけて活躍したイラストレーター、編集者、ファッションデザイナーです。 中原は香川県に生まれ、1930年代に少女雑誌『少女の友』の表紙や口絵、挿絵を手掛け、その洗練された大きな瞳の美しい少女画 …

中村 佑介

中村佑介は、日本を代表するイラストレーターです。 中村は兵庫県に生まれ、大阪芸術大学デザイン学科を卒業後、フリーランスのイラストレーターとして活動しています。ロックバンド『ASIAN KUNG-FU GENERATION …

カントク

カントクは、日本のイラストレーター・原画家で主にライトノベルやゲーム、アニメ関連の分野で活動している作家です。 彼は兵庫県出身で、10代で活動を開始し、同人サークル『5年目の放課後』を立ち上げました。以来、『変態王子と笑 …

井上 安治

井上安治は、明治時代前期に活躍した夭折の浮世絵師・版画家です。 1864年、東京・浅草並木町に生まれました。本名は安次郎といい、号として安治・安二・安二郎・安はる・探景などを用いました。 幼少期より絵を好み、はじめに月岡 …

大河原 邦男

大河原邦男は、日本を代表するメカニックデザイナーです。 大河原は東京都に生まれ、東京造形大学を卒業後、アパレルメーカー勤務を経て1972年にタツノコプロに入社しました。『科学忍者隊ガッチャマン』でメカデザインを担当したの …

ヒグチ ユウコ

ヒグチ ユウコは、日本を代表する画家・絵本作家の一人で、独特な幻想世界を描く作風で知られています。 ヒグチは多摩美術大学在学中より個展活動を開始し、その後は画集、装画、絵本制作を中心に幅広く活動しています。2014年刊行 …