ジャン・モワラス(Jean Moiras)は、1945年にフランス中部シャマリエールで生まれた現代フランスを代表する画家の一人です。独特の質感表現と詩的な世界観で知られています。
若き日は映画やテレビ、舞台美術の制作に携わり、ニキ・ド・サンファルやジャン・ティンゲリーら著名芸術家の制作にも参加しました。この時に培われた空間構成力や照明効果の感覚が、のちの絵画表現の大きな基礎となっています。
1970年代以降は絵画制作に専念し、フランス国内をはじめ、ニューヨーク、シカゴ、ルクセンブルク、日本など各国で個展を開催しています。作品は幾何学的な構成と幾重にも塗り重ねた豊かな色彩、厚みのあるマチエールを特徴とし、風景や花、街並みを抽象と具象の間を行き来する独自の表現で描き出します。
建築的な画面構成と静謐な空気感が調和した詩情豊かな世界観は高く評価され、多くの愛好家を魅了し続けています。
水野年方は、明治時代に活躍した浮世絵師・日本画家です。
江戸・神田に左官屋の子として生まれた年方は、幼少期から優れた画才を見込まれ、13歳で最後の浮世絵師と称される月岡芳年に入門して伝統的な浮世絵の技術を学びました。明治後期には新聞の挿絵を多く手掛け、時代を代表する人気絵師として活躍。『やまと新聞』や『都の花』などで数々の口絵や挿絵を描き、その高い実力が岡倉天心に認められました。これにより日本青年絵画協会へ加わると、明治31年(1898年)の日本美術院創立の際には賛助会員として参加しました。門下からは、鏑木清方や池田輝方、池田蕉園といったのちの美人画の最高峰と称される名手たちが輩出されており、教育者としても極めて大きな功績を残しています。
彼の作品の特徴は、代表作『三十六佳撰』『今様美人』をはじめ、美人画・風俗画の秀作を残しており、人物を小さく描き余白を活かした構図や、繊細なぼかし技法を用いた近代的な画風が特徴です。明治という新しい時代の空気をまとった、華やかながらも気品に溢れた美人画を得意とする一方で、歴史画も描いており、弟子の鏑木清方によると、依頼ではなく自ら進んで描く場合は歴史をテーマにすることを好んだといわれています。
水野年方は、近代化が進む中で、伝統的な浮世絵の技法を受け継ぎつつ、新聞・小説の挿絵や「美人画」「歴史風俗画」に新境地を開拓し、後進の育成にも多大な貢献をした作家といえます。
歌川芳藤は、幕末から明治時代にかけて活躍した浮世絵師です。
江戸に生まれ、本名を西村藤太郎といいます。特に子供向けの「おもちゃ絵」と呼ばれる浮世絵で名を馳せました。歌川国芳の門下に入り技術を受け継ぎ、歌川派の流れを汲みながらも、独自のユーモアと創意を加えた作風で人気を博し、「おもちゃ絵の芳藤」と称されるほど明治期に至るまで子供たちからの支持を集めました。
作品には紙を切って組み立てられる立体玩具やすごろく、着せ替え人形など、遊びと学びを兼ね備えた要素が多く見られます。さらに、流行病の魔除けとして描かれた「はしか絵」や、文明開化の世相を反映した風俗画なども手がけ、時代の激変を敏感に捉えた作品を数多く残しました。また、猫好きだった歌川国芳の影響もあり、猫をモチーフにしたユーモラスな擬人化絵を数多く発表したことでも知られます。なかでも代表作の『五拾三次之内 猫之怪』は、大小複数の猫たちが絶妙に重なり合って1匹の巨大な化け猫の顔を形作る、彼の卓越したアイデアが活かされた作品として高い評価を得ています。
歌川芳藤は、おもちゃ絵などの制作を通じて子どもたちの娯楽や遊びの文化に貢献し、激変する世相のなかで庶民の日常や暮らしを親しみやすく描いた浮世絵師です。
サクティ・ボーマンは、フランスを拠点に活動するインド出身の現代美術作家です。
ボーマンはインド・コルカタに生まれ、1956年に同地の美術学校を卒業後、フランスに渡りパリの国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)で修学しました。イタリア滞在中にルネサンス期のフレスコ画から強い影響を受けており、半世紀以上にわたりフランスに在住しつつ、母国インドとも強い結びつきを保ちながら国際的な活動を続けています。妻はフランス人画家のマイテ・デルテイユ(Maïté Delteil)であり、娘のマヤ・ボーマン(Maya Burman)、姪のジャヤスリ・ボーマン(Jayasri Burman)もそれぞれ美術作家として広く知られています。
彼の作品は、インドの伝統とヨーロッパの古典主義が融合し、現実とファンタジーの境界線を曖昧にするような夢想的な情景を描き出している点が特徴です。油彩とアクリルの反発作用を応用した独自の「マーブリング技法」により、フレスコ画や大理石を思わせる特有の重厚感と質感を生み出しています。主なモチーフには、ヒンドゥー教の神々や精霊、ヨーロッパの道化師(アルルカン)、象や鳥といった動物たち、そして彼自身の家族などが用いられ、現実世界と神話が交差する神秘的な世界観を構築しています。
サクティ・ボーマンは、東洋と西洋の文化を融合させ、独自の技法で『夢と神話の世界』を現出させる画家ともいえます。
永瀬義郎は、大正から昭和にかけて活躍した版画家・画家です。日本の創作版画運動の初期を支えた重要人物の一人として知られています。
RoamCouch(ロームカウチ)は、岐阜県安八町を拠点に活動する日本のストリートアーティストです。
彼は岐阜県に生まれ、本名は小川亮です。緻密なステンシル技法を用いた作品で知られており、日本の浮世絵的感覚と現代ストリートアートを融合させた独自表現によって注目を集めています。幼少期より漫画文化の影響を受けて絵を描き始め、高校卒業後はデザイナーとして活動していました。その後、大病を患った経験を契機に、自身の人生や表現活動を見つめ直し、本格的にアーティストの道へ進んだとされています。
2011年より「RoamCouch」名義で本格的にアーティスト活動を開始し、2014年にはアメリカ・ニューヨークで初の個展を開催しました。また、同年より故郷である岐阜県安八町を中心に無償で壁画を描くプロジェクト、Emotional Bridge Projectを開始し、街中に大型壁画を設置することで、国内外のアートファンの呼び込みを試みています。近年は、美濃和紙を取り入れた作品制作にも取り組んでいます。
彼の作品は、ストリートアートの「ステンシル技法」を高度に発展させ、日本の浮世絵的感覚と融合させている点に特徴があります。本人はこの独自様式を「Neo Ukiyo-e(ネオ浮世絵)」と称しており、50層以上にも及ぶ手切りステンシルを重ねて制作する緻密な手法で知られています。この工程により、通常のステンシルでは難しい滑らかな階調や空気感、奥行き、光の表現を可能にしています。作品によっては制作に数か月を要するものもあるとされ、都市風景、少女像、夜景、星空、廃墟などを題材にした、映画のワンシーンを思わせるノスタルジックな作風も特徴です。
RoamCouchは、緻密なステンシル技法による叙情的かつ幻想的な表現で注目を集める現代ストリートアーティストといえます。