田辺竹雲斎とは大阪堺で明治から続く竹工芸を生業とする家の当主が襲名する名です。当代は4代田辺竹雲斎となります。
田辺家の始まりは兵庫県尼崎で生まれた田辺慎常(初代田辺竹雲斎)の家の近くに竹細工を扱う家があったことでした。幼少期から竹に魅せられた初代は、12歳で大阪の名工の元に弟子入りし24歳で竹雲斎の号を受け継ぎました。初代竹雲斎は茶道と華道にも精通しており、豊かな感性から重厚な作品を作り出すのに長けた作家でした。初代竹雲斎は国内のみならず国際的な展覧会にも参加しグローバルに活動していました。
2代竹雲斎は初代の長男として生まれ、27歳の時に初代が他界し2代目を襲名しました。襲名以降は独自の作品作りに熱を注ぎ、初代の得意とした重厚な唐物ではなく、透かし編みを利用した作品を得意としておりました。そんな繊細で今回作品は日本らしいとして「和物」と呼ばれました。
3代目は2代の長男として生まれ矢竹を使い直線美を生かしたモダンな作品作りが特徴でした。3代目の頃から茶道具や花藍だけではなくアート的な芸術品を作るようになりました。
当代である4代目は、歴代竹雲斎の作り上げた伝統を踏襲した作品を制作しています。それらの作品は世界中の美術館に展示され高い評価を得ています。4代目は竹を使った空間デザイン(インスタレーション)を作る作家でもあります。
伝統と現代的な感覚を両立させた漆芸家・吉田華正。作り出す独自の漆芸作品は、多くの現代茶人を魅了しています。
石川県の小松に生まれた吉田は、蒔絵師の子としてその技術を学びました。伝統的な花鳥風月や古典を参考にした絵柄と、自ら考案した新しい茶道具の制作を行っています。様々な漆器工芸展での受賞の他、現在は山中漆器の組合員としても活動しており、1998年には国の伝統工芸士にも認定されています。
また、現在は漆芸よした華正工房の相談役として、若い職人の育成にも尽力しています。
近年はガラスを使用した茶器の制作にも取り組んでおり、ガラス棗など特徴的な作品も作られています。
龍文堂とは江戸末期から昭和33年頃までに8代続いた京都の鉄瓶屋になります。初代・四方龍文が京都で蝋型鋳造によって鉄瓶を造ることを創案したことが龍文堂のはじまりだと言われております。龍文堂の名声は明治から昭和の頃にかけて日本中に伝わるようになりますが、その一方で蓋の裏に「龍文堂」と名前だけ掘った贋作が数多く世間に出回ることとなりました。2代目龍文堂・四方安之助の弟子には亀文堂創始の亀文堂正平や、鉄瓶の作家として名高い秦蔵六がおり、どちらも近年に至るまで高い評価を博している作家です。夏目漱石の「吾輩は猫である」の文中にも「この様な時には龍文堂の松風の音を聞いて茶を喫するが、最高の贅沢」といった一節がございます。以上のことから龍文堂が、高級な鉄瓶として評価されていたことがわかります。
木村 清五郎(きむら せいごろう)1949年~現在 新潟出身の金工師になります。本名は文蔵。初代は実の父親になり、父に師事して技術を学びました。父の影響で幼い頃から金工に親しんで育ちました。茶道具と言えば、掛軸や香合等に注目されがちですが、茶席を設ける際の水注、釣釜用具、灰匙、火箸等も立派な茶道具の一つになります。木村清五郎は、細かい細部までも気にかけ製作をしており、シンプルな造形と控えめな文様が特徴的で、象嵌等非常に手のかかる技法も用いている作品もあります。1992年に2代木村清五郎を襲名してからも新製品を次々製作しており、南鐐製品の際は「清雲」の号も襲名しており、2種類の号が使用されております。
小原治五右衛門は「城端蒔絵」を代々継承している漆芸家です。
城端蒔絵(じょうはなまきえ)とは白色をはじめとする鮮明な中間色を表すことができるのが特徴としてあり、花鳥文様などをそのままの色調で表すことができる技法です。「加賀蒔絵」とは異なり、金銀を使用することを禁じられていた時代に漆の色彩で表すことは不可能と言われていた白色を表すことに成功した城端蒔絵は「治五右衛門の白漆」と呼ばれました。
以後、小原治五右衛門が一子相伝として技術を代々受け継いでいき、城端の人や文化、自然と共に作品を作りあげていきました。
ぼかしの技法、鮮明な中間色に加えて白の色鮮やかな色調を取り入れた作品は一般の蒔絵で作られる作品とは異なる独特な様式が特徴的であり、その技法を代々受け継いでいる小原治五右衛門は今後も多くの人々を魅了していくことは間違いないでしょう。
豊場惺也(とよばせいや)は、愛知県出身の有名な陶芸家です。
1942年に愛知県の刀剣鑑定家・豊場重春(とよばしげはる)の四男として生まれ家業に取り組むこともなく、愛知県内の工芸高校卒業後、人間国宝・荒川豊蔵(あらかわとよぞう)に弟子入りし、その人物から直接指導を受けた数少ない陶芸家の一人です。また、荒川豊蔵の孫娘と1975年に結婚しています。
豊場惺也(とよばせいや)といえば、粉吹・備前・瀬戸黒・唐津など他にもたくさんあり、幅広い作域で有名です。茶器類などにかなりの安定感があり、豪快な人柄なのかそのことを感じる作品がかなり多く見受けられます。
個展ではかなりユニークな考えの持ち主で、料理映えすると人気な黒い器シリーズなど、数々の面白い個展を開いている反面、陶器の魅力を最大限に発揮した個展など、陶芸家としての熱い信念が感じられる方です。