ペルシャ絨毯 産地別ガイド:特徴・価値・買取相場を徹底解説

中国骨董の代表的な種類

ペルシャ絨毯は、イラン全土の多様な文化と歴史が織り込まれた伝統工芸品であり、その品質や意匠、素材の違いは産地によって大きく異なります。産地ごとの個性を理解することは、鑑賞はもちろん、購入や売却の際にも非常に重要です。

とりわけ、近年は世界的な需要の高まりによって高級品の価格が上昇しており、産地ごとの特徴と市場価値を理解しておくことは、資産としての評価にも直結します。

この記事では、代表的な産地として知られるタブリーズ、イスファハン、カシャーン、ケルマン、ナイン、クム、ヘリズ、ビジャー、バルーチ、トルクメンの特徴や人気の理由、そして買取相場の傾向について詳しく解説します。

技術と多様性の名門「タブリーズ」

タブリーズはイラン北西部に位置し、古くから交易都市として発展してきたペルシャ絨毯の名産地です。歴史は非常に長く、中世から宮廷向けの高級絨毯の生産地として知られており、現在も“世界三大産地”の一つに数えられるトップブランドです。

タブリーズ絨毯の最大の特徴は、織りの細かさとデザインのバリエーションの豊富さで、写実的な風景画から精緻なメダリオン、植物文様、動物モチーフなど幅広い作品が存在します。
特に《マヒ柄(魚柄)》はタブリーズを象徴するデザインとして世界的に知られ、繰り返し文様でありながらも優雅で落ち着いた雰囲気を生み出します。素材は上質なウールに加え、シルクをアクセントとして使用し、光沢と柔らかさを併せ持つ仕上がりが魅力です。

タブリーズは技術力の高い名工が多く、工房によって特徴が大きく異なる点も人気の理由です。また、イラン国内でも高い品質の糸と色彩技術を備えているため、耐久性にも優れ、実用性の高さから世界中の家庭で支持されています。市場評価は産地の中でも安定しており、年代が古くなるほど芸術品としての価値が増す傾向が強い点も特徴です。リビングに敷く実用絨毯としても、鑑賞用として飾るコレクションとしても適しており、初めてペルシャ絨毯を購入する人にもおすすめできる産地です。

買取相場は状態や結びの細かさに左右されますが、一般的なウール製で数千円~10万円前後、高級ラインでは数万円〜数十万円に達することもあります。

宮廷芸術の最高峰「イスファハン」

イスファハンはイラン中央部に位置し、「世界で最も美しい都市」と称される歴史的名所です。サファヴィー朝時代には王が都を置いたことから、宮廷文化と高度な工芸技術が発展し、その流れを継続している現在でもペルシャ絨毯の最高峰として世界中の愛好家から高い評価を受けています。イスファハン絨毯の特徴は、精緻で洗練されたデザインと非常に細かい織りにあります。素材の質にも強いこだわりがあり、最高級のコルクウールやシルクを使用し、艶やかで柔らかな表情を持つのが魅力です。色彩はクリーム・赤・青の調和が美しく、宮廷芸術を思わせる気品ある仕上がりが特徴です。

イスファハンのデザインは、中央の大きなメダリオンを中心に、細密な唐草文様や花柄が広がるスタイルが典型で、まるで美術館に飾られる工芸品のような精巧さがあります。また、優秀な工房・作家が多く存在し、作品には工房名が入るケースもあり、コレクション価値を大きく高めています。特にセイラフィアン工房の名は世界的に有名で、その作品はオークションで高額取引されることも珍しくありません。市場評価は全産地の中でもトップクラスで、状態の良い作品は長期的にも価値を維持しやすい点が魅力です。鑑賞用にも実用にも優れ、インテリアに格調高さを加えたい人におすすめの産地です。

買取価格は産地の中でも上位に入ります。状態良好なシルク製は50万円以上の査定がつくこともあり、希少な図案の場合は100万円を超える例もみられます。

伝統的なペルシャ絨毯の象徴「カシャーン」

カシャーンは古代から織物文化が発展した都市で、伝統的なペルシャ絨毯の象徴的なスタイルを持つことで知られています。サファヴィー朝時代には宮廷用の絨毯が数多く制作され、その歴史的背景から「もっともペルシャ絨毯らしいデザイン」を生み出す産地と評価されています。カシャーン絨毯の代表的なデザインは、赤を基調にした濃密な色彩と、中央に大きく描かれるメダリオン、そして周囲を飾る繊細な花柄文様です。この構図は現在でも最も有名なペルシャ絨毯のスタイルと言え、世界中で愛され続けています。

素材には高品質なウールが使用され、柔らかくしなやかな風合いを持ちます。また、縫いの密度が高く、丈夫で長持ちする点も評価ポイントです。格式あるデザインと耐久性の高さから、実用性と美観を兼ね備えた理想的な絨毯として、多くの家庭に取り入れられてきました。市場価値は安定しており、現代の作品は比較的入手しやすい価格帯ですが、ヴィンテージやアンティークのカシャーンは芸術性が高く、収集家にとって魅力的な存在となっています。特に19世紀後半にヨーロッパ向けに輸出された作品は人気が高く、現在でも高額で取引されることがあります。伝統を色濃く残しながらも現代の住まいに馴染むため、購入・売却どちらの側面でも評価されやすい産地です。

カシャーン絨毯は耐久性が高く、アンティークの評価も高いことから、状態が良ければ買取額は10万〜20万円前後、アンティーク級はそれ以上の査定が期待できます。

日本のインテリアに馴染む洗練された色彩「ナイン」

ナインはイラン中央部に位置する都市で、比較的新しい産地ながら日本での人気が非常に高いペルシャ絨毯です。特に、ナインならではの“ナインブルー”と呼ばれる淡い青色と、アイボリー・ベージュを組み合わせた上品な配色が特徴で、和室・洋室問わずどんなインテリアにも合わせやすいことで知られています。ナイン絨毯は清潔感があり、繊細で優雅な雰囲気を持つため、日本の住宅事情にも非常にマッチします。

品質評価で重要となるのが「La(ラー)」と呼ばれる等級制度です。糸の細かさによって4La、6La、9Laとランクが分かれ、数字が小さいほど高品質となります。最上級の4Laは極めて細かい織りとシルクの装飾が使われ、芸術品としての価値も高い逸品です。一般的な家庭で流通しているのは6Laや9Laが中心で、価格と品質のバランスが取れているため人気です。

ナインのデザインは、中央のメダリオンと周囲のアラベスク文様が典型的で、過度に華美ではないため、現代的なミニマルインテリアにも調和します。市場価値は安定しており、状態の良い作品であれば購入時と近い価格で再販できるケースもあります。ペルシャ絨毯の入門としても、長く愛用したい実用目的でも最適な産地です。

買取相場は、4Laなら数十万円、6Laで20万前後、9Laで10万円前後が一般的な相場と言えます。

シルク絨毯の最高峰と卓越した芸術性「クム」

クムはイラン中部の比較的新しい産地ですが、その技術力とデザイン性の高さから世界的に評価が高く、特に“シルク絨毯の最高峰”として知られています。クム絨毯の多くはシルク100%で作られ、光の角度によって色が変化する独特の光沢を持ちます。この玉虫色の輝きは他産地ではほとんど見られず、クムならではの圧倒的な美しさとして愛されています。

クムは写実的なデザインが得意で、風景画や人物画、細密な植物文様など、美術品として鑑賞できるレベルの作品が多く存在します。著名な工房や作家が多数存在し、作品には工房名や作家サインが入ることも多いため、コレクション性が高く、長期的な資産価値が期待できます。特に、ナジャフィアンやラジャビアンなどの工房作品は世界のオークションでも高額取引されるほどです。

また、クム絨毯は絹の糸を極細に紡ぎ、1平方センチあたり数百回もの結びを重ねるため、驚くほど細密な模様が表現できます。模様の線がシャープで美しく、色彩も豊富で洗練されているため、インテリアの主役として飾る人も多い産地です。市場価値は産地の中でもトップクラスで、一般的な作品でも高値で流通し、工房作品の場合は大幅なプラス査定となることも。芸術性と資産性を兼ね備えたペルシャ絨毯を求める人には、クムが最もおすすめの産地の一つです。

買取額は他の産地に比べて群を抜いて高いことが特徴です。一般的なシルク絨毯でも20万円以上、著名工房の作品であれば50〜200万円、場合によってはそれ以上の高額査定が行われます。

色彩の魔術師が織りなす優雅な曲線「ケルマン」

ケルマンはイラン南部の歴史ある都市で、古くから染織技術の中心地として知られてきました。柔らかく温かみのある色彩と、優雅な曲線を多用したデザインが特徴で、その芸術性の高さから「色彩の魔術師」と称される産地です。ケルマン絨毯は赤や青、ベージュを基調とし、独特の深みと柔らかさを持つため、空間に優しい雰囲気を与えます。代表的なモチーフには、花瓶文様、ペイズリー柄(ボテ柄)、樹木文様などがあり、どれも自然の景観を思わせる有機的なデザインが魅力です。

ケルマンはまた、糸染め技術において非常に優れており、特に“ラバーン・ケルマン”と呼ばれる赤系統の色合いは他産地では再現が難しいとされるほどです。素材には上質なウールが使用され、滑らかな触り心地と軽やかな質感を持ちます。絨毯の厚みは産地の中ではやや薄手で、敷き心地が柔らかく、家庭での使用にも適しています。

市場価値は近年上昇傾向にあり、特に20世紀前半に制作されたヴィンテージ作品には国内外で需要があります。理由として、現在のケルマン産絨毯の生産量が減少しており、過去の作品の希少性が高まっているためです。アンティーク市場でも評価が高く、状態の良い作品は高額査定となるケースも珍しくありません。クラシックな絨毯の中でも柔らかく落ち着いた雰囲気を求める人に最適な産地です。

特にアンティークのケルマン絨毯は欧米で高い人気があり、状態が良ければ高額査定となる可能性があります。近年は国内での流通量が減っているため希少価値も高まり、10〜30万円前後の査定となるケースが増えています。

モダンに映える力強い幾何学模様「ヘリズ」

ヘリズはイラン北西部アゼルバイジャン地方に位置する産地で、力強い幾何学模様と厚手のしっかりとした織りが特徴のペルシャ絨毯です。ヘリズ絨毯は、太いウール糸で織られるため非常に丈夫で、100年以上使用できると言われるほど高い耐久性を誇ります。その武骨で存在感のあるデザインは、近年の北欧家具や無垢材のインテリアと相性が良く、若い世代からの人気が急上昇しています。

デザインの中心には、大きく直線的なメダリオンが配置され、周囲には角張った植物文様が描かれるスタイルが一般的です。色彩は赤・青・黒を基調とし、落ち着いた中にも力強さを感じさせます。この素朴で堂々とした雰囲気が、モダンインテリアに大胆なアクセントを与えるため、世界的にも評価が高まりつつあります。

ヘリズの魅力は、芸術性だけでなく“実用性の高さ”にもあります。厚手で重く、家具を置いても跡がつきにくく、リビングや玄関など人の出入りが多い場所でも長く使用できます。また、子どもやペットがいる家庭でも安心して使用できるほどの丈夫さがあり、実生活に取り入れやすい点もメリットです。

市場価値としては他の名門産地に比べると手頃ですが、それがむしろ人気を後押ししており、近年ではヴィンテージのヘリズが欧米の市場で非常に高い評価を受けています。これに伴い、状態の良いヘリズ絨毯は今後さらに価値が上昇する可能性が高く、実用とインテリア性、さらには投資性を兼ね備えた注目の産地です。

ヘリズのペルシャ絨毯の買取相場は、一般的には数万円〜数十万円程度が目安です。小〜中型サイズの現行品や状態普通のものは5〜15万円ほど、状態の良い中型〜大判サイズは10〜30万円前後が期待できます。100年以上前のアンティークや保存状態の良い大判サイズのヘリズは高評価となり、国内でも50万円以上、海外オークションでは百万円前後で取引される例もあります。

「鉄の絨毯」と称される堅牢性「ビジャー」

ビジャーはイラン西部クルディスタン地方の産地で、その非常に強い織りから“鉄の絨毯”の異名を持つことで知られています。ビジャー絨毯は、特徴的な“湿潤織り”という技法で作られ、湿らせたウールを強く圧縮しながら織るため、密度が極めて高く、他の絨毯とは一線を画すほどの硬さと耐久性を持ちます。これにより、重い家具を乗せてもほとんど凹まず、数十年単位で使用できる実用性を備えています。

デザインは落ち着いた幾何学模様や繰り返しの花柄が多く、色彩も深い赤や紺、ベージュなどシンプルな配色が中心です。派手さはないものの、重厚感があり、空間に安定感や安心感を与えるデザインが魅力です。北欧家具やシンプルな現代インテリアとの相性が良く、“控えめな高級感”を求める層に特に人気があります。

ビジャーは手織りの中でも特に長持ちする産地として評価され、中古市場でも安定した需要を誇ります。耐久性が高いため、長期間使用しても大きく価値が落ちにくく、状態の良いヴィンテージ作品はむしろプレミア価格が付くこともあります。特に大判サイズは希少で市場でも人気が高く、玄関マットからリビングサイズまで幅広い用途で選ばれています。絨毯としての実用性・堅牢性を重視したい人にとって、ビジャーは最適な選択肢です。長く使えて飽きのこないデザイン、そして高い資産性を兼ね備えているため、家庭用にもコレクション用にも非常に優れた産地といえます。

ビジャー絨毯の買取価格は比較的安定しており、5万〜15万円前後が中心です。

素朴で味わい深い部族絨毯「バルーチ」

バルーチはイラン東部からアフガニスタン、パキスタンにかけてまたがる地域に住む部族によって織られる“部族絨毯”の代表格です。遊牧民の生活の中から生まれた絨毯であり、工房製の絨毯とは異なる素朴さと温かみが魅力です。バルーチ絨毯の特徴は、深い赤や黒、こげ茶などの暗めの色調で構成される落ち着いた配色で、部族の伝統的な感性が反映された幾何学模様や護符のようなモチーフが多用されます。

素材には羊毛が使われ、軽く柔らかく、扱いやすい点も魅力です。遊牧民が生活用として織っていたため、小サイズのラグや玄関マットに使いやすいサイズが多く、現代のインテリアでも取り入れやすい存在です。バルーチの絨毯は、自然染料による深い色合いが特徴で、使い込むほど艶が増し、独特の味わいが出てくる点も人気の理由です。

市場価値としては比較的手頃で、3〜6万円ほどで購入できる作品が多く、ペルシャ絨毯の入門として選ばれることも多い産地です。しかし、近年は天然染料の作品やヴィンテージバルーチへの注目が高まり、欧米市場で人気が上昇しています。特に希少性の高い古いものや独特の色彩を持つものは高値で取引される傾向があります。素朴で味わいのあるインテリアを好む人、民族的な雰囲気を住まいに取り入れたい人にとって、バルーチは最適な選択です。落ち着いた色調は和室にも洋室にも馴染みやすく、使うほどに深まる美しさを楽しめる絨毯です。

買取価格は産地の中では比較的控えめですが、状態が良ければ5万円前後の査定が期待できます。

規則的な紋章文様「トルクメン」

トルクメン絨毯は、中央アジアのトルクメン族によって古くから織られてきた伝統的な部族絨毯で、“ギュル”と呼ばれる独特の紋章文様が特徴です。ギュルは角張った花柄やエンブレムのような形をしており、このギュルが規則的に並ぶデザインはトルクメン絨毯の象徴として世界に広く知られています。色調は深い赤やワインレッドを基調とし、黒や濃紺が差し色として使われるため、重厚でクラシックな印象を与えます。

素材は柔らかなウールが中心で、織りも比較的細かいため踏み心地が良く、座る・敷くなどの実用にも向いています。部族絨毯でありながら、洗練されたパターン化されたデザインが評価され、世界中で根強い人気を持っています。また、小ぶりのサイズが多く、玄関マットや壁掛け、アクセントラグとして使いやすい点も魅力です。

トルクメン絨毯は、現在でも各国で制作されていますが、特に古いトルクメン絨毯はコレクション価値が高く、市場で高値がつく傾向があります。ヴィンテージのものは自然染料の発色が美しく、深みのある赤が時間とともに柔らかな色合いへ変化するため、世界的に評価が高くなっています。モダンインテリアにもクラシックにも合わせやすく、一枚敷くだけで部屋の雰囲気を引き締める力があるのがトルクメン絨毯の魅力です。個性を演出しながらも伝統的な美しさを楽しみたい人に最適な産地といえます。

買取価格は、状態が良ければ5万円前後の査定が期待できます。

まとめ

このようにペルシャ絨毯は、産地ごとに色彩・文様・素材・歴史が大きく異なり、それぞれに唯一無二の魅力があります。売却時において、「どこで作られたか(産地)」の特定は、作品の価値を決定づける必須要素であり、「産地」=「作品の価値」と言っても過言ではありません。

専門知識を持つ鑑定士のいる買取店であれば、産地・工房・素材・年代まで正確に見極めることができ、適正な高額査定へとつながります。

この記事の監修者

株式会社 緑和堂
鑑定士、整理収納アドバイザー
石垣 友也

鑑定士として10年以上経歴があり、骨董・美術品全般に精通している。また、鑑定だけでなく、茶碗・ぐい吞み、フィギュリンなどを自身で収集するほどの美術品マニア。 プライベートでは個店や窯元へ訪れては、陶芸家へ実際の話を伺い、知識の吸収を怠らない。 鑑定は骨董品だけでなく、レトロおもちゃ・カード類など蒐集家アイテムも得意。 整理収納アドバイザーの資格を有している為、お客様の片づけのお悩みも解決できることからお客様からの信頼も厚い。

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