ロイヤルコペンハーゲンとは デンマーク王室御用達の歴史と人気シリーズの価値

デンマーク王室御用達ロイヤルコペンハーゲン

ロイヤルコペンハーゲンは、デンマークを代表する陶磁器ブランドとして世界的な評価を得ています。この記事では、1775年の創業からデンマーク王室御用達に至るまでの歴史的経緯を整理し、ハンドペイントの技術やブルーフルーテッドをはじめとする主要シリーズについて解説します。さらに、裏面のバックスタンプから製造年代を読み解く方法や、一級品を客観的に見分けるための基準についても取り上げ、コレクションの価値を正しく把握するための情報をお届けします。

ロイヤルコペンハーゲンとは デンマーク王室御用達の歴史と伝統

ブランドの基本情報と設立の背景

ロイヤルコペンハーゲンは、1775年にデンマークの首都コペンハーゲンで開窯された陶磁器製造窯です。当時のヨーロッパでは硬質磁器の製造が盛んに行われており、この潮流を受けて皇太后ユリアーネ・マリーの後援のもとに設立されました。ドイツのマイセンなどで培われた磁器技術を採り入れつつも、デンマーク独自の磁器づくりを志して発足した点が特徴といえます。

創業当初から、白磁にコバルトブルーの絵付けを施した製品が中心に据えられ、その伝統は今日まで脈々と受け継がれています。ロゴには王冠マークと3本の波線が採用されており、これはブランドの象徴として現在も使用され続けています。

デンマーク王室御用達としての歩みと現在の地位

ロイヤルコペンハーゲンは長い歴史の中で、王室と深い結びつきを築いてきました。主な歩みを年代順に整理すると次のようになります。

  • 1775年:ユリアーネ・マリー皇太后の後援によって開窯
  • 1779年:デンマーク王室の所有となり、名称に「ロイヤル」の称号が加えられる
  • 1790年:ロシア女帝エカチェリーナ2世への贈答品としてフローラダニカの制作が始まる
  • 1868年:民間企業へと経営が移行
  • 1884年:アルミニア社の傘下入りとアーノルド・クローの芸術監督就任により、近代的な生産体制へ移行
  • 1908年:イヤープレートの製造が開始される
  • 2013年:フィンランドのフィスカース社の傘下となる

経営体制は時代の流れとともに変わってきましたが、デンマーク王室御用達としての地位は現在も維持されており、王室の記念品や公式行事の食器なども手掛けています。

ハンドペイントの技術と青色顔料の特徴

ハンドペイントによる絵付け工程

ロイヤルコペンハーゲンの製品は、熟練職人によるハンドペイントで絵付けされています。この職人は「ペインター」と呼ばれ、一人前になるまでには長い年月の修練が必要とされ、専門の教育課程を通じて技術を身につけていきます。

絵付けの工程は次のように進行します。まず、素焼きされた磁器の表面に下絵の輪郭を筆で描き、続いてコバルトブルーの顔料で細部を塗り重ねていきます。ブルーフルーテッドの場合、一枚のプレートに施される筆致は千を超えるとされ、濃淡や線の太さによって陰影を表現します。絵付けが終わると、透明な釉薬を掛けて高温で本焼成が行われます。

コバルトブルーの発色メカニズム

ロイヤルコペンハーゲンを象徴する鮮やかな青色は、コバルト顔料と高温焼成の組み合わせによって生み出されます。絵付けの段階では顔料は黒っぽい灰色をしていますが、約1,400度の高温で焼成されることで化学変化を起こし、深い青へと発色するのです。

この技法は「アンダーグレーズ(釉下彩)」と呼ばれ、釉薬の下に絵付けを施す形式のため、色が退色しにくく、長期間にわたって美しい発色を保てる点が特徴です。高温に耐えられる顔料は限られているため、伝統的なコバルトブルーが中心的な色として用いられ続けています。

ブルーフルーテッドなどの代表的なシリーズとイヤープレート

ブルーフルーテッドの3つのデザインとフルレース

ブルーフルーテッドは、1775年の創業当初から製造され続けている、最も歴史あるシリーズです。デザインは3種類に分類され、それぞれ装飾の複雑さに違いがあります。

種類縁の形状装飾の特徴
プレイン波型で装飾は控えめシンプルな唐草模様
ハーフレース縁の一部にレース状の透かし中間的な装飾レベル
フルレース縁全体にレース状の透かし加工最も複雑で手間のかかる装飾

フルレースは縁全体に細やかな透かし彫りが施されており、成形と絵付けの双方で高度な技術が求められます。フルレースの原型となるデザイン自体は開窯当初の1775年に誕生しましたが、当時はデザートプレートのみに用いられていました。フルディナーサービスとして展開されるようになったのは、約100年後の1888年のことです。以来、シリーズの中でもとりわけ格式の高い製品として位置づけられています。

プリンセスとブルーパルメッテの形状構造

プリンセスは、縁取りに独特な模様があしらわれたシリーズで、優雅で女性的な意匠が魅力です。カップやプレートの縁に沿って繊細な青の装飾が連なり、中央部にはシンプルな余白を残したデザイン構成となっています。

一方のブルーパルメッテは、主にアジア市場向けに開発されたシリーズです。日本の食卓文化になじむ形状となっており、和食器としても使いやすい椀型のデザインが特徴的です。パルメット(棕櫚の葉)をモチーフにした模様が中央に描かれ、シンプルながら存在感のある意匠に仕上がっています。両シリーズを比べると、プリンセスは縁取りに重点を置いた欧州的なデザイン、ブルーパルメッテはアジアの食文化に合わせた実用性重視のデザインという違いが見て取れます。

イヤープレートの製造と型の破棄

イヤープレートは、1908年に最初に発表されたクリスマスプレートを起源とするシリーズで、毎年異なるデザインで製造されます。デンマークの風景やクリスマスにちなんだモチーフが青一色で描かれ、コレクターアイテムとして世界的な人気を集めています。

その年の製造が完了すると、使用された型は破棄されるという伝統があります。これは同じデザインが再び生産されないことを保証するものであり、その年のプレートの希少性と価値を保つための重要な工程となっています。この慣習によって、各年のイヤープレートは唯一無二のコレクション対象となっているのです。

フローラダニカの歴史と製造体制

植物図鑑をモチーフにした誕生背景

フローラダニカは、1790年にデンマーク王クリスチャン7世が、ロシア女帝エカチェリーナ2世への贈り物として制作を命じたことを起源としています。デザインは、デンマークの植物図鑑「Flora Danica」に収録された植物画をモチーフとしており、一枚一枚に異なる植物が緻密に描き込まれています。

制作には約12年もの歳月が費やされましたが、完成に至る前にエカチェリーナ2世が崩御したため、贈られることはなくデンマーク王室に留められました。現存する初期の作品はデンマーク王室のコレクションとして保管されています。

現在の完全受注生産体制と絵付け工程

フローラダニカは現在も完全受注生産体制のもとで製造されており、注文を受けてから製作がスタートします。主な工程は次の通りです。

  • 高品質な白磁の成形および素焼き
  • 熟練職人による植物画の下絵描き
  • 多色の顔料を用いた精密なハンドペイント
  • 縁の透かし彫りを手作業で加工
  • 金彩による縁取りや装飾の施工
  • 高温焼成による定着

これらの工程を経て1点の製品が完成するまでには長い時間を要し、約30人の職人の手を渡り、焼成も8回以上に及びます。これほど多くの手間がかけられていることが、フローラダニカの希少性を支えているといえるでしょう。

バックスタンプとペインターサインによる年代と一級品の判別方法

裏面の王冠マークと3本の波線の意味

ロイヤルコペンハーゲン製品の裏面には、王冠マークと3本の波線から成るバックスタンプが刻印されています。王冠は王室御用達を示す象徴であり、3本の波線はデンマークを取り囲む3つの海峡、すなわちエーレスンド海峡、大ベルト海峡、小ベルト海峡を表しているとされています。

このデザインはブランド設立当初から採用されており、デンマークという海洋国家の地理的な特徴を象徴しています。バックスタンプの形状や描き方は時代とともに微妙に変化してきており、これが年代を判別する手がかりとなります。

アルファベット周辺の点で製造年代を特定する手順

バックスタンプには、ペインターの識別記号や製造年を示すマークも加えられており、これらを手がかりに製造年代を特定することができます。特に、刻印されたアルファベットの周辺に打たれた点の位置が製造年の目安となります。

点の位置製造年代の目安
点なし初期の製造品
アルファベットの上部に点特定年代の識別
アルファベットの下部に点別の特定年代の識別
複数の点の組み合わせより詳細な年代識別

正確な年代を判別するためには、専門書や公式資料を参照することが推奨されます。バックスタンプは時代によって色や形が変わってきており、緑色のスタンプや青色のスタンプなど、色調も判別材料の一つとなります。

スクラッチの有無と一級品の確認基準

ロイヤルコペンハーゲンの製品には、品質等級を示す「スクラッチ」と呼ばれる線が入れられる場合があります。バックスタンプの波線部分にスクラッチが入っていれば、それは二級品以下を示すサインとされ、スクラッチのない製品が一級品と判定されます。

一級品とは、色ムラや歪みなどの基準をクリアした最高品質の製品であり、コレクション価値も高いとされています。また、絵付けを担当した職人の識別記号である「ペインターサイン」も裏面に記されており、誰が絵付けを行ったかを特定する役割を果たしています。これらの情報を総合的に確認することで、製品の背景や品質をより深く理解できます。

コレクションの維持管理と状態確認の基準

付属品の保管と表面状態の確認項目

ロイヤルコペンハーゲンの製品を良好な状態で保管するためには、付属品の管理と定期的な状態確認が欠かせません。主な確認項目は次の通りです。

  • 純正の外箱および内箱の保管
  • 証明書やギャランティカードの保存
  • 表面の傷、ヒビ、欠けの有無
  • 金彩や絵付けの剥がれや退色
  • 縁のレース部分の破損の有無
  • ペインターサインやバックスタンプの状態
  • 汚れやシミの付着状況

これらを定期的にチェックすることで、コレクションの状態を長期にわたり維持することが可能となります。保管にあたっては、直射日光を避け、湿度が安定した場所で管理することが望ましいでしょう。

コレクター需要と流通経路の基本知識

ロイヤルコペンハーゲンには世界的なコレクター層が存在し、中古市場でも一定の需要があります。特にフローラダニカや古いイヤープレート、廃番となったシリーズなどは、コレクターからの関心を集めやすい傾向にあります。

流通経路は、アンティークショップ、専門ディーラー、オークションハウス、インターネットオークション、フリーマーケットなど多岐にわたります。各流通経路にはそれぞれ特徴があり、真贋の確認や状態評価の基準も異なります。市場の動向は時期や需要によって変動するため、客観的な情報に基づいて判断することが大切です。

まとめ

ロイヤルコペンハーゲンは、1775年の創業以来、デンマーク王室御用達として長い歴史を紡いできた陶磁器ブランドです。ハンドペイントによる伝統的な絵付け技術と、コバルトブルーの鮮やかな発色を特徴とし、ブルーフルーテッドやフローラダニカ、イヤープレートなど多彩なシリーズを世に送り出してきました。バックスタンプやペインターサイン、スクラッチの有無を確認することで、製造年代や一級品の判別が可能です。作品の背景や仕様を正しく理解することが、コレクションの価値をより深く味わうための鍵となるでしょう。

この記事の監修者

株式会社 緑和堂
鑑定士、整理収納アドバイザー
石垣 友也

鑑定士として10年以上経歴があり、骨董・美術品全般に精通している。また、鑑定だけでなく、茶碗・ぐい吞み、フィギュリンなどを自身で収集するほどの美術品マニア。 プライベートでは個店や窯元へ訪れては、陶芸家へ実際の話を伺い、知識の吸収を怠らない。 鑑定は骨董品だけでなく、レトロおもちゃ・カード類など蒐集家アイテムも得意。 整理収納アドバイザーの資格を有している為、お客様の片づけのお悩みも解決できることからお客様からの信頼も厚い。

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