本作は、江戸時代後期の蒔絵師「原 羊遊斎」が手掛けた遠州好みの棗です。
羊遊斎は、琳派の作風を基盤とした蒔絵を多く製作しました。
細部にわたる精緻な描写と洗練された美の表現が特徴的です。
彼の作品は、当時の上流階級や茶人たちの間で高く評価されました。
本作は、黒地に「片輪車文様」が施され、露を表した銀粒が付けられています。
内側には季節の花が描かれ、華やか且つ上品に仕上げられています。
片輪車文様とは、車輪を半分水に浸し、水や波と組み合わせたものを指します。
牛車の車輪が木製だった頃、数日放置すると乾燥が原因で壊れてしまうことがあったため、これを防ぐために車輪を外して川の流れに浸しておいたそうです。
この様子がのちに、文様として蒔絵に組み込まれるようになりました。
本作は、バランスの良い美しさを求めた遠州にぴったりの一品です。
これらに加えて状態なども考慮し、今回は上記の査定結果となっています。