今回ご紹介するお品物は、駒沢徹作 鵬雲斎書付『蛍 大棗』でございます。
駒沢徹は、精密な蒔絵技術と豊かな意匠感覚で知られる漆芸家です。光や陰影のニュアンスを繊細に描き出す作風を得意とし、伝統的な輪島塗や加賀蒔絵の美意識を継承しながら、現代の茶席に映える気品ある茶道具を数多く手掛けています。
本作『蛍 大棗』は、漆の深い黒地に繊細な蒔絵で蛍が描かれた美しい逸品です。光の当たり方や見る角度によって蛍の光や情景がほのかに表情を変え、まるで初夏の夜に佇んでいるかのような深い幻想的な奥行きを感じさせます。
茶道具における「書付」とは、家元や高僧が作品の箱に銘や署名を記し、その品質や格式を認めたことを示す重要な要素です。作品の由来や価値を証明するものとして、評価において大きな意味を持ちます。
また、本作品には裏千家15代家元・鵬雲斎の書付と銘が共箱に添えられており、棗本体にも花押が確認できる大変良好な状態のお品物でした。そのため、こちらの評価とさせていただきました。