今回ご紹介するお品物は、指物師 駒澤利斎(こまざわ りさい)作、裏千家十六代 坐忘斎書付の『楓大棗』でございます。
棗は、薄茶を点てる際に用いる抹茶を入れる木製漆塗りの薄茶器のひとつです。植物の「ナツメ」の実の形に似ていることからその名がついたとされる茶道具です。
駒澤 利斎は千家十職という千家好みの茶道具を代々制作する十の職家のひとりです。その中でも駒澤家は木工・指物(さしもの)を担い、釘やネジを使わず木と木を精緻に組み上げる高度な職人技を代々継承してきた名門です。
本作『楓大棗』は、千家十職としての技と伝統を受け継ぐ名工による秀作です。美しく木目の通った上品な木地を生かし、四季の風情を感じさせる楓(カエデ)の意匠が際立つ、たいへん見事な逸品に仕上がっています。指物師ならではの寸分の狂いもない合口や、手にした際のしっとりとした触感に職人の高い技術が光ります。
さらに本作には作家本人の共箱(ともばこ)が付属し、箱蓋には裏千家十六代 坐忘斎家元による「書付(箱書)」が添えられていることに加え、棗の蓋裏にも坐忘斎家元による「花押(かおう)」が認められております。
茶道具における「書付」や「花押」は、家元や宗匠が作品を直接手に取り、その出来映えや由緒を認めた最高の証であり、道具としての格や真贋の確実さを保証する最上の評価要素となります。状態も非常に良好であったので、今回はこちらの評価とさせていただきました。