今回ご紹介する作品は、但野英芳のぐい吞み『梟(ふくろう)』でございます。
但野英芳は、伝統的な技法をベースに曲線や彫りの強弱で、風景や動植物などのモチーフを彫り出す日本の江戸切子作家です。父・但野孝一が創業した「但野硝子加工所」(東京都江東区)の二代目として作品を手がけています。従来の幾何学模様を中心とした江戸切子とは異なり、二色被せガラスの厚みを削り分けることで、色のグラデーションや立体的な表現を行っている点や、複数のダイヤモンドホイールを使用することで曲線など複雑なカットが特徴です。
本作は、緑色から底に向かって琥珀色(アンバー)へと移り変わる二色被せガラスが使用されており、ガラスの厚みを緻密に削り分けることで、羽の一枚一枚の質感や立体感が表現されています。
また、角度ごとに異なる絵柄が施されており、正面には大きな翼を広げた梟が刻まれています。背面には伝統文様である「菊つなぎ」や、木の中央にある円からは梟が小さく写り込みます。また、底面には真上から見た木に向かうウサギが刻まれています。それぞれに物語性を感じさせ、但野ならではの遊び心と技術が詰まった作品です。
こちらの作品は、保存状態が良好であることに加え、本人によるサインの刻印が確認できることや共箱が付属していることから、上記評価額となりました。