今回ご紹介するお品物は、十代 大樋長左衛門(大樋 年郎)作、裏千家十五代 鵬雲斎書付の『黒茶碗』でございます。
大樋焼は、加賀藩前田家の御用窯として発展した金沢の伝統陶芸です。楽焼の流れを汲む「手捏ね」による温かみのある造形と、粘土の素地を生かした独自の釉薬(飴釉・黒釉)が深い味わいを生み出すのが特徴です。
その十代目にあたる大樋 年郎(1927〜2023)は、伝統的な技法を継承しながら現代的な造形美を追求し、文化勲章を受章するなど近現代の茶陶界を代表する名工として知られています。
本作は、艶やかで深みのある黒釉と手に馴染む独特の手捏ねの造形が美しく、高台脇には十代大樋特有の銘(印)がしっかりと刻まれています。さらに、作家本人の共箱(ともばこ)に入っていることに加え、箱蓋には裏千家十五代 鵬雲斎家元による「書付(箱書)」が添えられています。
茶道具における「書付」とは、家元や宗匠が作品を吟味し、その出来映えや由緒を認めて共箱などに墨書・押印したもので、道具としての格や真贋の確かさを保証する極めて価値の高い要素となります。
大樋焼の第一人者による銘入りの作品であることに加え、共箱、そして裏千家十五代目の家元である鵬雲斎宗室の書付が揃った作品であったため、今回はこちらの評価とさせていただきました。