今回ご紹介する作品は、引間二郎の『木彫り熊 ループタイ』でございます。
引間二郎は、北海道八雲町を代表する木彫り熊の作家・彫刻家です。元々は農業を営んでいましたが、1963年に遭った交通事故により農業を続けることが困難となったことをきっかけに木彫りの道へ進み、彫刻家・柴崎重行や茂木多喜治らに師事して技術を修得しました。
「毛彫り」と「面彫り」の技法を用い、熊の力強さと彫刻としての造形性を追求した独自の作風を確立しています。大胆な彫刻表現から繊細な毛並みの描写まで、確かな表現力と巧みな技術力が高く評価されています。
本作は、引間二郎によって制作された木彫り熊のループタイです。ノミ跡の面を生かした面彫りで仕上げられていることから、師である柴崎重行らの影響が示されています。鼻筋、眉間、耳、頬などが平面の組み合わせで削り出されており、抽象化されつつも熊の骨格や表情が捉えられています。
ダークブラウンに仕上げられたカット面には木材の木目が現れており、素材の質感が保たれています。引間二郎をはじめとする八雲の彫刻家たちは、置物や彫刻像にとどまらず、日常的に身につけられるループタイやブローチ、帯留めといった身の回りの小品も手掛けました。
こちらの作品は、北海道民藝・木彫彫刻の作品としてコレクターからの需要があることに加えて、保存状態が良好であること、本人の刻サインが確認できることから、上記評価額となりました。