今回ご紹介する作品は、瀧口政満の『ミミズク』でございます。
瀧口政満は、北海道・阿寒湖畔を拠点に活動した日本の木彫彫刻家です。阿寒湖アイヌコタンで工房兼民芸品店「イチンゲの店」を営み、木が持つ本来の木肌や生命力を引き出した独自の作風で数多くの作品を遺しました。北海道ろうあ連盟福祉大会文化賞、釧路新聞社芸術賞、厚生大臣賞、北海道知事賞などを受賞し、阿寒湖畔の旅館「あかん遊久の里 鶴雅」に作品が常設展示されているほか、東京の日本橋高島屋をはじめ全国各地で個展を開催して広く高い評価を獲得しました。
本作は、深く刻まれた彫り跡によって羽毛の流れや鋭い眼差しを表現した木彫作品です。フクロウはアイヌ文化において「コタンクルカムイ(村を守る神)」として深く尊崇されています。本体部分には、風雪に耐えた木の割れ目、朽ちた木肌、垂直に走る深い繊維質といった自然木の形状を活かし、それらをそのままミミズクの「羽」や「背中」へと見立てています。顔周りには放射状に細やかな削り跡が刻み込まれており、眼の鋭い光と羽毛の立体感が巧みに表現されています。
こちらの作品は、北海道・阿寒湖の自然やアイヌ文化の精神性を象徴する代表的なモチーフであることに加えて、保存状態が良好であること、ならびに本人による彫銘(サイン)が確認できることから、上記の評価額となりました。