大野 昭和斎

岡山県出身の国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された木工芸師として有名な人物は大野昭和斎といえるでしょう。
1912年に岡山県の総社市に生まれた大野昭和斎(本名 片岡誠喜男)は14歳の時には指物師の父である片岡斎三郎に師事し、指物や象嵌などの木工芸の技術を全般的に教わり、高い技術を身に着けていきました。
23歳のころにはより高い技術を習得する為に文人画家である柚木玉邨に絵画を習い、昭和斎という号を授かります。その後は1937年に中四国九県連合展にて「松造小箱」を出品して特賞を受賞したことを皮切りに数々の賞を受賞していきます。1965年には第12回日本伝統工芸展に「欅香盆」にて特賞を、1968年に第15回同展にて「拭漆桑飾筥」にて日本工芸会会長賞を受賞し、その年に日本工芸会の正会員となります。1974年には木創会を設立し、後進の育成に努めました。そういった功績が称えれて1977年に「指物・刳物・象嵌」にて岡山県の重要無形文化財に、1984年には「木工芸」にて国の重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。

室瀬 和美

室瀬和美は2008年に「蒔絵」で国の重要無形文化財に認定された漆芸家です。
1950年に東京都に生まれた室瀬和美は、同じ漆芸家であった室瀬春二の仕事を幼少から見て育ち、高校生の時に漆芸・蒔絵の道を志すようになります。東京芸術大学大学院を修了後は、松田権六と田口善六に師事し、日本特有の美を基本として、自然の植物や動物を観察してデザインを作ること、古典研究で得たことを制作に生かすことといった松田権六が創り出した新しい時代の漆芸を受け継いでいきました。創作活動を始めた室瀬和美は、1975年の第22回日本伝統工芸展にて冬華文蒔絵飾箱が初入選したことを皮切りに数々の賞を受賞していくことで、注目を集めていきます。また、自身が創設した目白漆芸文化財研究所では古典作品の修復など文化財の保存に努めていき、1996年~1998年に手掛けた三嶋大社所蔵の国宝である「梅蒔絵手箱」の復元模造は、室瀬和美のその後の創作活動に大きな影響を与えました。漆の美と素晴らしさを国内外で発信を続け、2008年には蒔絵で国の重要無形文化財に認定され、同年に紫綬褒章を受章されました。

山下 義人

山下義人は「蒟醤」にて国の重要無形文化財に認定された漆芸家です。
1951年に香川県に生まれた山下義人は、高松工芸高校を卒業し、香川県漆芸研究所を卒業した19歳の時に生涯の師と仰ぐ磯井正美に師事し、蒟醤を学びます。その後は、「蒔絵」で国の重要無形文化財に認定されている田口善国にも師事しました。
二人の人間国宝からは、技術的なことはほとんど教わらなかったそうですが、漆芸家としての美を教わり、二人の背中や作品を見ることによって美学を学んでいきました。1980年に日本工芸会の正会員になってからは、数々の賞を受賞し1989年の第36回日本伝統工芸展に出品した作品は文化庁の買上げとなりました。2000年から2004年にかけては金毘羅宮の式年遷座祭にて本宮天井画「桜樹木地蒔絵」の復元と監修に従事し、山下義人自身の制作活動と共に文化財の保護にも尽力しております。
山下義人の蒟醤作品の特徴としては、色漆の濃淡を使った繊細で緻密な彫りと穴埋めであり、自然をモチーフにした作品が多く、炎をモチーフにした抽象的な具象を扱うことには特別な情熱をもっていたとのことです。その多彩なゆらめきを表現することにはとても苦労し、蒟醤丸箱「炎」は10年もの歳月をかけて制作をし、山下義人の代表的な作品です。

中野 孝一

中野孝一は「蒔絵」にて国の重要無形文化財に認定された漆芸家で、特に高蒔絵を得意とされております。
高蒔絵とは漆を何度も塗っては乾かしての作業を繰りかえすことで模様を作っていく技法で、塗り重ねる時に漆の厚さを変えたり、研ぎ具合を変えることで文様などを立体的に見せることができます。
中野孝一は変わり塗を独自に応用した蒔絵や研出し蒔絵、螺鈿や平文、卵殻などを駆使した様々な表現を得意とされており、作品のモチーフは栗鼠(リス)やうさぎなどの可憐な小動物を用いることが多く、躍動感に満ちた姿を生き生きと表して軽妙な独自の作風を表していることから高い評価を得ております。
また、中野孝一の木地作りから下地作りや蒔絵などの工程を一貫して自身で行っていることで漆芸の風合いを大事にされており、漆の持つ黒を引き立たせるために蒔絵には金粉を使うといったこだわりを持っております。

中野孝一は作品を作る上で毎日の積み重ねが重要であると考えており、基本の積み重ねで初めてその人の独創性や個性が発揮されると考え、人から見えない部分への誠実さを踏まえた上で毎日コツコツと作品を制作することで良い作品が出来上がると考えております。

増村 紀一郎

増村紀一郎は2008年に「髹漆 」にて国の重要無形文化財に認定された東京都出身の漆芸家です。
「髹漆 」とは昔からある漆芸の技法であり、素地の材料を選ぶことから始まり、下地工程を経て、上塗・仕上げ工程に至る幅広い領域にわたり、漆芸の根幹をなす重要な技法であり、素地の材料には木材、竹、布、和紙、革等さまざまあり、髹漆(きゅうしつ)は素地を選ばず、各材質の特色を生かした作品作りが可能です。麻を漆で塗り何枚も重ねて風合いを出す乾漆という技法がありますが、増村紀一郎の作品はそれだけにとどまらず、中には動物の皮に漆を塗った「漆皮」という技法もあります。この漆皮という技法は平安時代以前より確立されていた技法であるといわれており、木材の加工技術の向上により廃れてしまったのではないかといわれております。
このような技法を駆使して増村紀一郎はあらゆるものを漆工芸品と変化させており、その作品は多くの人々を魅了しているに違いないでしょう。

山岸 一男

皆様は山岸一男という人物をご存知でしょうか。
山岸一男は2018年に「沈金」の分野にて国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された石川県出身の漆芸家です。沈金という輪島塗の加飾技法の会得に加え、沈金の一種で金の代わりに漆を塗る沈黒といった技法や輪島にて沈金の応用として発展をした「沈金象嵌」といった表現を用いることで作品としての可能性を広げました。
山岸一男の作品には様々な工夫が施されており、沈黒には繊細な質感表現、沈金象嵌では彫溝に自身で加工をした赤や緑といった色漆を埋めて研ぐことで様々な色彩表現を可能とし、これらの技法を組合わせながら北陸の自然や風景を大胆に映し出し、現代観溢れる作品であるとして高い評価を受けております。
1973年に第23回日本伝統工芸展に初入選したこと皮切りに数々の賞を受賞し、2004年には石川県より紀宮様へ献上した「沈金象嵌深山路小箱」を謹製したことでさらに評価を受けることとなります。そして、これまでの功績が称えられ2012年には紫綬褒章を受章、2018年には国の重要無形文化財に認定されました。

北村 昭斎

北村昭斎は「螺鈿」にて国の重要無形文化財に認定された漆芸家です。 螺鈿とは漆工芸品の加飾技法のひとつで貝殻の内側の真珠層と呼ばれる光沢を帯びた虹色の部分を文様にして切り出し、漆地や木地などに彫刻した面にはめ込む技法で、奈 …

高野 松山

1889年(明治22年)5月2日~1976年(昭和51年)3月5日、熊本県出身の日本漆芸家になります。幼少期より細工に興味を持ち、地元熊本の工業徒弟学校で漆芸を学びました。その後京都市立美術工芸学校(現在の京都市立芸術大 …

中村 宗哲

中村宗哲は当代が十三代目となる千家十職の塗師の家門であります。 初代は江戸時代まで遡り、もともと豊臣家の臣下の武士でありましたが、豊臣秀吉が征伐された大阪の陣より京都市中に静かな暮らしを求めたことが塗師を家業にしたきっか …

須田 賢司

須田賢司は1954年に東京都に生まれた木工芸師です。 指物師を二代にわたって営む家庭に生まれた須田賢司は、東京都立工芸高校を卒業した後に父である桑翠に師事すると同時に母方の祖父である山口春哉より漆芸を学びます。1975年 …

大西 勲

「髹漆」という漆芸の漆を塗ることを意味する技法で2002年に国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された漆芸家に大西勲という職人がいます。 大西勲が作る作品はどれもこだわりを持っており、見るものを魅了します。 大西の得意と …

小森 邦衞

小森邦衛は石川県出身の漆芸家です。 1945年に輪島市で生まれ、20歳の時に和家具職人から輪島塗師に転身をし、はじめは沈金の技法を学ぶ為に樽見幸作に師事し、1968年に輪島市立輪島塗芸技術研修所沈金科に入所しました。そこ …

太田 儔

太田儔は「蒟醤」にて国の重要無形文化財に認定された岡山県出身の漆芸家で、籃胎蒟醤を研究し、布目彫蒟醤や二重編み蒟醤などの独自の技法を確立させたことが有名です。 布目彫蒟醤とは太田儔が考案した技法で1ミリの中に3~4本の細 …

前端 春斎

前端春斎は石川県出身の塗師が代々襲名している名称であり、当代は三代目となります。 初代は山中塗の木地師として活躍しており、その息子が二代目を名乗っております。山中塗とは、石川県加賀市の山中温泉地方にて生産されている漆器で …

小口 正二

小口正二(おぐち・しょうじ) 明治~平成まで4つの時代を駆け抜けた漆芸作家です。 小口正二の代名詞と言えば「彫漆」技法です。 「彫漆」とは感じの通り「彫刻」と「漆芸」を合わせた技法です。これは、木工芸と漆芸技法それぞれを …

大場 松魚

大場松魚は「蒔絵」で国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された石川県出身の蒔絵師です。 大場松魚といえば、「平文」の技法を現代に蘇らせたことで有名です。 「平文」とは、もともと奈良時代に中国から平脱という名前で伝達されて …

松田 権六

松田権六は、「うるしの鬼」とも称された漆芸の第一人者です。 石川県に生まれた松田権六は、7歳のころから蒔絵の修行を始めて石川県立工業学校を卒業後に上京し、東京美術学校に入学しました。 卒業後は志願兵や東洋文庫で朝鮮楽浪出 …

西村 國峰

西村國峰は石川県出身の輪島塗で有名な漆芸家です。中でも「沈金」という技法を得意としています。 「沈金」とは、輪島塗の加飾方法の一種でのみで塗面に溝を彫り彫った後に出来た凹部に漆を塗り込んだ後に金・銀の箔や粉、あるいは、色 …

磯井 如真

磯井如真は1956年に「蒟醤」にて人間国宝に認定された漆芸家です。 蒟醤とは、漆芸の加飾技法の一つで漆の表面に剣という彫刻刀で文様を彫り、その凹みに色漆【いろうるし】を埋めて研ぎ出し、磨き仕上げるものです。線刻の美しさが …

一后一兆

一后一兆は石川県出身の蒔絵師で、あまり素性は知られていないものの「水蒔絵硯箱」が美智子皇后の御買上となるなど、輪島塗の名人として知られております。 その作品の特徴は、豪華絢爛な作風であると言えます。 棗の作品が人気を博し …

荒川 文彦

荒川文彦は、1961年石川県江沼郡山中町に生まれました。 1980年29歳の頃、漆芸家石川省三氏の元に師事します。 その後、1994年に行われた日本伝統漆芸展初入選以降連続入選をしました。 2017年には、日本伝統工芸展 …

北大路 魯山人

北大路魯山人(本名・房次郎)は波乱万丈の人生と、その多才な才能を生かした作品が知られる人物です。作品は篆刻や陶芸、絵、書、漆芸など多岐に渡る他、美食家としても有名です。 魯山人は1883年に京都に生まれますが、生まれる前 …

川瀬 表完

川瀬表完は、江戸時代末期に京塗師であった初代・木村表斎を祖先に持ち、その技法を代々受け継いできた京塗師で、当代が川瀬表完を名乗ります。現在は三代目となります。 川瀬家は初代の千太郎から始まり、二代が繁太郎、三代が厚、四代 …

尾形 光琳

尾形光琳は17世紀後半~18世紀にかけて京都や江戸で活躍した琳派の大成者として知られる絵師です。 雅で優雅な伝統を感じさせる大和絵的な描写の中に斬新で大胆な構図や画面展開を取り入れた明瞭でかつ装飾的にもかかわらず革新的な …

三谷 吾一

三谷吾一は昭和から平成にかけて活躍した漆芸家です。沈金の技法による独特の作風で人気を得ております。 石川県輪島市の塗師の家庭に生まれ、幼いころより様々な職人たちと接します。14歳の時には沈金師である蕨舞洲に師事しました。 …