今回ご紹介するお品物は、昭竜山作『赤間硯 南硯』でございます。
赤間硯は、山口県下関市周辺で産出される赤間石を用いて製作される伝統工芸品です。その歴史は古く、鎌倉時代にはすでに生産されていたと伝えられ、日本を代表する硯の産地として発展してきました。
赤間石は緻密な石質を持ち、墨の磨り心地や発墨性に優れていることから、多くの書家や愛好家に親しまれています。また、その美しい石目も高く評価されており、実用品としてだけでなく鑑賞用の工芸品としても人気を集めています。
本作は、昭竜山によって製作された「南硯」と銘された作品です。赤間石特有の石紋が全面に現れており、まるで木材の年輪や木目を思わせる流麗な縞模様が印象的です。青緑色と紫褐色を帯びた自然の模様から、長い年月をかけて形成された赤間石の持つ個性美を存分に味わうことができます。
また、本作は装飾を施さず、素材そのものの美しさを活かした簡潔な意匠も魅力の一つです。なだらかな曲線で構成された端正なフォルムは、赤間石特有の木目状の石紋をより際立たせており、洗練された静かな存在感を漂わせています。華美な彫刻を加えることなく、石そのものが持つ景色や質感を鑑賞できる点は、本作ならではの見どころといえるでしょう。実用品としての機能美と、天然石が織りなす自然美が調和した優品です。
また、本品には硯の裏面には作家のサインが確認できました。また、共箱が付属しており、伝統的工芸品の認定シールも確認できました。作品および付属品の保存状態も比較的良好であったため、こちらの評価をさせていただきました。