本作は、巻物の中に複数の唐墨(古墨)が収められた「巻墨」と呼ばれる品です。
本紙には花と「癸亥 重九日(旧歴の9月9日)」の文字が描かれ、内部には装飾を施した美しい墨が丁寧に納められています。
付属する墨の中に「文方齋」や「八駿図」などの意匠が施されていることから、清末〜民国期に上海で高級墨を多数制作した「文方齋」が手掛けた品と考えられます。さらに、「松滋候」や「黄粱初熟 碧管増華 蜨来香釆 鳳吐文誇」と詩が刻まれたものもあり、鑑賞性と実用性を兼ね備えた味わい深い一品となっています。
また、「庚寅」の年の旧暦 9月9日に書かれたとみられる、墨に関する賛文のような書が付属されていました。
製造元の活動期や墨の意匠、付属文書の記載などから、1890年頃に製作された品と考えられます。加えて、古墨としての価値の高さや状態の良さなどを考慮し、本作は上記の査定結果となりました。