津金日人夢(つがね ひとむ)は1973年熊本生まれの陶芸家です。
1993年に有田窯業大学校ロクロ科修了後、熊本に戻って父のもとで作陶を始めます。はじめの頃は父にならった作陶を行っておりましたが、独自の作品表現を求める中で新たな形を見つけ出します。
津金の作品の特徴は、なんといっても「青磁」ではないでしょうか。
中国宋時代の青瓷の研究を意欲的におこない、青瓷ならではの品格を損なうことなく、自己流の現代的表現を模索しました。日本工芸会を中心に公募展での受賞を重ね、東京国立近代美術館で開催された『青磁のいま』展にて青瓷の現代作家10人に選出されております。2008年には日本工芸会正会員に認定、2010年は熊本県伝統的工芸品に指定と数々の成績を収めております。
全国各地の百貨店にて、個展を開催しており、これからの活躍も楽しみな青瓷の現代作家さんでございます。
許麟盧は、中国の絵画・書画作家です。
1916年に中国は山東省蓬莱市で生まれ、幼いころから絵画や書画に触れて成長していきました。1939年からは書家・絵画家の溥心畲に師事し、技術と心得を学びました。溥心畲は朱子学をはじめとしたさまざまな学派や古典に精通しており、許麟盧の創作の礎となる教養は彼から学びえたと考えられます。
1945年頃からは当時すでに評価を得ていた斉白石に師事し、13年間の同行の中で絵画の真髄を学び取りました。
許麟盧は花鳥画を得意としました。力強く、それでいて繊細な筆遣いは花鳥の生命力をありありと描き出し、凛とした迫力を感じさせます。生前は北京花鳥画研究会の会長職も務めていましたように、中国花鳥画において大きな位置を占めていた作家であったと分かります。
現在でも評価は高く国内外問わず希少な作品を多数残しております。
緑和堂では、中国人作家・花鳥画の名人である許麟盧の作品を取り扱っております。
野村義照は、大阪府生まれの日本画家です。
1971年に東京藝術大学大学院を卒業すると、前田青邨、その後は平山郁夫に師事し、日本画の技量を高めていきました。
1977年。院展で日本画大賞を受賞したその年、野村義照は初めてのギリシャ・ローマ旅行に行きました。そこでギリシャ古典美術に感銘を受け、研究をはじめました。その後もギリシャをはじめとしたヨーロッパ諸国に研究旅行を続け、その累計は30回以上に及びました。
野村義照は作品の題材として、ギリシャやローマ、ヨーロッパ各地の遺跡などを多く扱っております。青を基調とし、そこへ荘厳な遺跡や塔を写実的に、そして透き通るように表現します。繊細な色遣いと緻密な造形が、そのまま題材の持つ奥ゆかしさとして立ち現れます。
時に建物に限らず、彼のフィルターを通して、そこに在る美は静謐な形で描かれます。静謐で荘厳な世界こそが彼の絵画であり、魅力です。
油彩の日本画を主とし、リトグラフなどの版画作品も制作しています。
服部時計店は、時計事業で著名なセイコー(SEIKO)の前身となる企業です。
創業は1881年で、当時21歳だった服部金太郎が輸入時計・宝飾品の販売店として銀座に立ち上げました。服部時計店は取引先の、特に外国商館から高い評判を得たこともあり、すぐに目覚ましい躍進を遂げます。
1892年には国産クロックの製造販売を開始。まもなくして銀座四丁目の表通りに移転し、現在まで続く銀座の象徴「時計塔」が建てられました。その後1920年代に一度改築され、現在の銀座で見られるものは二代目の時計塔となります。
現在のセイコーのイメージからすれば意外かもしれませんが、服部時計店は時計や宝飾品の他、多く銀製品も手掛けておりました。銀瓶や盃にはじまり、花瓶、香炉、純銀像など仔細は尽きませんが、服部時計店の製品ジャンルとして大きな位置におりました。
製品には「服部製」の文字が彫られており、判別のしやすいものが多いです。お手持ちの銀製品に「服部製」の文字がありましたら、それは服部時計店製のものの可能性が高いでしょう。
関武比古は、三代続く銀細工師です。
初代・関武比古は1908年の千葉県勝浦に生まれ、上京を機に打物の名匠である田島勝之師に師事し、銀細工を修行しました。その後、さらに香坂宗廣師のもとで技術を磨き、28歳で独立しました。数年後には太平洋戦争に動員されますが、1948年から再び活発な制作を開始しました。
二代・関武比古は、初代の長男として1936年に生まれました。中学生の頃から父のもとで技術の研鑽に励み、1963年には父と共に「関工芸株式会社」を設立します。現在は三代・武比古監修の下、貴金属美術の伝統工芸品を製作を行っております。
「貴金属美術工芸品を、ひろく人々に」を標語として、伝統工芸の技法に、新しい技術をとり入れて制作されたいくつもの作品は、長らく人々から親しまれています。
城康夫は、京都出身の油彩画家です。
国画会が運営する日本最大規模の公募展・国展において幾度も受賞されており、以後も国画会会員として長く活躍されました。
リアリズムに準拠した静物画を得意としており、もっぱら題材にされるのは花や果実、石、陶器などです。そう聞くとシンプルな絵画に思われるかもしれませんが、城康夫の最大の特徴はその題材の活かし方にあります。
絵画の中心となるいくつかの題材が、乗せるように地面に並べられ、それをある視点から写真に収めるような画角で描かれます。まさしく「静物画」と言えるような、作用を起こさない”物自体”の表現が見事な作家さんです。
油彩画の製作が主な方であり、また同時に古典技法であるテンペラをはじめ、様々な技法を用いた絵画を近年でも制作するなど、新奇性の高い作家さんでもあります。
お目にかかる機会があれば、作品の持つ静謐さや落ち着きなど、城康夫の表現の世界を是非感じ取っていただきたいです。