本作は、萩と鈴虫が金蒔絵で描かれた輪島塗の硯箱でございます。
中秋の名月に、薄とともに月を愛で、鈴虫の音色に耳を傾けるという、日本らしい情趣あふれる題材が採用されています。大胆に配された萩の葉の構図と、随所に描き込まれた鈴虫の触角や足、羽に至るまでの繊細な表現は、蒔絵ならではの高度な技術を感じさせ、非常に風流な趣を備えた作品です。季節感と意匠性を兼ね備えた点は、本作の大きな魅力といえます。
一方で、角に大きな削れが見受けられ、木地の木目が見えてしまっている点は評価に影響しております。また、内側にカビの付着が確認されました。カビにつきましては修復が可能な範囲ではございますが、現状でのコンディションを総合的に判断し、今回の査定額とさせていただきました。
状態面での減点はあるものの、意匠の美しさと輪島塗としての格調は十分に感じられるお品でございます。