木庵性瑫は、中国明代末から江戸時代初期にかけて活躍した黄檗宗の高僧であり、日本における黄檗宗の基盤形成に大きく貢献した人物です。書の分野においても極めて高い評価を受けており、隠元隆琦・即非如一と並び「黄檗三筆」の一人として知られています。端正でありながら力強さを感じさせる筆致は、黄檗文化特有の禅的精神性を色濃く映し出しています。
本作は、大きく力強く揮毫された「茶」の一字が画面右側に堂々と据えられ、その圧倒的な存在感が際立つ構成となっております。一方で、左側に添えられた繊細かつ流麗な草書体の添え書きが絶妙な均衡を生み出しており、豪放な大字との対比によって、画面全体に豊かな空間的奥行きと緊張感が表現されています。
肉厚でどっしりとした筆致による大字表現には、安定感と力強さが宿っており、木庵らしい重厚な作風がよく表れています。また、添え書きの草書には、禅僧ならではの精神性や静謐な気配が感じられ、簡潔な筆運びの中にも深い内面性が見受けられます。こうした剛柔の対比によって、作品全体に高い芸術性と精神性が生み出されている点は、本作の大きな魅力といえるでしょう。
さらに、本作には落款および印章も確認でき、保存状態も概ね良好であることから、総合的に見て高い資料性と鑑賞価値を有する作品として、今回の評価とさせていただきました。