市野雅彦 『線紋器』　

市野雅彦(いちの まさひこ)は、兵庫県丹波篠山市出身の現代を代表する陶芸家です。父・信水氏や名匠・今井政之氏に師事した後、1988年に独立し「大雅窯（現・大雅工房）」を立ち上げました。

伝統的な丹波焼の技法や風土を受け継ぎつつ、現代的でオリジナリティあふれる造形を追求してきた作家です。

「線紋器」の最大の魅力は、赤と黒（あるいは灰色やオレンジ）の対比による美しさです。まるで無我の境地を思わせるその佇まいは、見る者に静かな感動を与えます。

こちらは彼の卓越した技術と繊細な造形美、そして作家の思索と自然観が見事に融合した陶芸作品です。その造形美とともに、「使い手の想いを受け止める余白」を持たせるという思想が、その魅力に深みを添えています。

単なる工芸品という枠を超え、鑑賞と日常使用の両面で豊かな体験をもたらす器として高く評価される点と状態を考慮してこちらの評価となりました。