
北大路魯山人は、重要無形文化財保持者、いわゆる「人間国宝」への推薦を辞退した人物として知られています。国から最高クラスの栄誉を打診されながら、それを断るというのは尋常なことではありません。今回は、その理由にあらわれた魯山人の信念と、辞退したことが作品の価値にどう影響するのかを解説します。
魯山人は人間国宝への推薦を辞退した
昭和30年(1955)、魯山人は織部焼の技法によって重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されましたが、これを辞退しています。実はその前にも同様の打診があったと言われており、複数回にわたって認定を受ける機会がありながら、辞退する姿勢を貫いたとされています。
当時の関係者や文化財行政に携わる人々からも、魯山人は人間国宝への認定を期待されていました。また、魯山人のもとで一時期作陶に励み、のちに人間国宝となる荒川豊蔵のような存在が周囲にいたことからもわかる通り、その実力は誰もが認めるところでした。
それにもかかわらず、「国の制度による認定」を辞退し続けたというエピソードそのものが、他の芸術家とは一線を画す、魯山人という異端の生き様を物語っています。
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人間国宝とはどのような称号なのか
人間国宝とは、文化財保護法にもとづき国が指定する重要無形文化財の「保持者」を指す通称です。陶芸・染織・漆芸・金工など、伝統的な工芸技術を高い水準で体現し、その技を後世に伝える存在として、国が個人を指定する制度であり、認定される人数はごくわずかです。
工芸家にとっては生涯の到達点ともいえる称号であり、この称号を得ることを目標に精進する作家も少なくありません。それだけに、これを辞退したという事実の重みが際立ちます。
なぜ辞退したのか
辞退の理由については、「芸術家は位階勲等(いかいくんとう)とは無縁であるべきだ」という強い信念によるものだったと伝えられています。
「作品そのものが価値を語るのであって、肩書きや称号によって評価されるべきではない」というのが魯山人の一貫した考えでした。魯山人は禅の言葉である「無位の真人(地位や肩書きを持たない、ありのままの人間こそ真の人間である、という意味)」を人生の指針としていたとも言われており、この生き方が人間国宝という肩書きそのものへの距離感につながっていたと考えられます。
なお、辞退の際に語ったとされる具体的な発言内容は資料によって表現が異なっており、正確な原文は確認されていません。一方で、人間国宝の認定を辞退したことや、位階や肩書きにとらわれない人物像については、多くの評伝や解説書で共通して紹介されています。
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星岡茶寮からも追放されてしまう魯山人
肩書きや権威と距離を置く姿勢は、人間国宝の一件に限りません。
魯山人が顧問兼料理長として育て上げた会員制料亭「星岡茶寮」は、彼のプロデュースによって会員千人を超える人気店へと成長しました。しかし、昭和11年(1936)、その運営方針や出費の多さをめぐって経営者の中村竹四郎と対立した魯山人は、内容証明郵便による解雇通知という形で自ら育てた星岡茶寮を去ることになります。
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組織や肩書きに縛られず、自分の美意識を貫こうとする姿勢は、時に周囲との軋轢を生みながらも、生涯を通じて一貫していたと言えるでしょう。人間国宝の辞退も、この延長線上にある選択だったと見ることができます。
人間国宝でなくても、価値が揺らぐわけではない
「人間国宝でないなら、査定額も低くなるのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、美術品・骨董品の査定現場で見ていると、そうとは言い切れません。人間国宝という肩書きは、あくまで国による制度上の認定であって、作品そのものの評価とは別の軸にあります。
魯山人の作品は、人間国宝の認定を受けていないにもかかわらず、陶芸・書・篆刻・漆芸といった幅広い分野で圧倒的な評価を受けており、国内外の美術館に所蔵されている事実からも、肩書きの有無を超えて評価されていることがうかがえます。
実際の査定でも、箱書きや来歴、作風の完成度、状態などを総合的に見て価値を判断しており、人間国宝の認定の有無だけで大きく評価が左右されるわけではありません。作品ごとの価値や買取相場について、詳しくは以下でも紹介しています。
北大路 魯山人の参考買取価格
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北大路魯山人 紅葉 色紙参考買取価格 100,000円 -
北大路魯山人 『備前キヌタ 花入』 友斎箱参考買取価格 800,000円 -
北大路魯山人『備前 土割山椒 鉢』参考買取価格 800,000円 -
北大路魯山人『土瓶』参考買取価格 300,000円 -
北大路魯山人 『信楽 木の葉 平向』参考買取価格 600,000円 -
北大路魯山人 作『菓子器』参考買取価格 130,000円
※参考買取価格は当日の価格であり、その価格を保証するものではありませんので予めご了承下さい。
※状態や付属品の有無、買取方法などによって価格が変動いたします。
まとめ|肩書きより、作品そのもので語った人物
人間国宝への複数回の推薦とその辞退は、魯山人がすでに国からも最高クラスの評価を受けるだけの実力を認められていたことの裏返しでもあります。
その上で、権威や肩書きに頼ることなく、ひたすら妥協なき作品づくりそのもので世に問い続けた生き様――それこそが、彼の残した作品の価値を今なお揺るぎないものにしている本質と言えるでしょう。
肩書きの有無を超えて、自らの精神が宿った作品だけを残した魯山人。その作品は、今でも私たちを惹きつけ続けてくれています。
















