
北大路魯山人は、陶芸家・書家・美食家として知られ、その多才ぶりから「万能の芸術家」とも評される人物です。グルメ漫画『美味しんぼ』に登場する美食家・海原雄山のモデルとしても知られており、名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。数ある顔の中でも、器の制作は魯山人が特に情熱を注いだ分野で、今なお高い人気を誇っています。今回は、器の制作にかけた魯山人のこだわりと、価値や買取相場の考え方について詳しく紹介します。
なぜ器の制作にこれほどの情熱を注いだのか
魯山人が器の制作を始めたきっかけは、料理にあります。会員制の「美食倶楽部」、その後の「星岡茶寮」で客をもてなす中で、季節の食材を活かした料理を出しても、それにふさわしい器がない、という不満を抱くようになりました。そこで、自ら器を作ることを決意したのです。
「食器は料理の着物である」という言葉を残しているように、魯山人にとって器は、料理を引き立てるための不可欠な存在でした。四季折々の食材の持ち味を活かした料理を、最良の設え(着物)となる器でもてなす。この考え方が、生涯にわたる作陶活動の原点になっています。
技法・形の幅広さに見る、魯山人の器の特徴
魯山人の器は、その技法・形の幅広さでも知られています。伊賀・織部・信楽・志野・瀬戸・備前・唐津など、日本の主要な陶芸産地の作風を数多く手がけ、粉引・呉須・染付・青磁・白磁といった多彩な技法を用いました 。形についても、鉢・皿・碗・向付・水指・花入・徳利・ぐい呑み・湯呑・菓子器・香炉など、実用の器から鑑賞に堪える作品まで、実に多岐にわたります。
これほど幅広い技法・形を手がけられたのは、魯山人が特定の一門に弟子入りする形はとらず、古陶磁の写しを研究し、また各地の窯から腕のある職人を招いて技術を吸収しながら、自分なりの作陶を築き上げていったためだと言われています。一つの様式に縛られず、料理や場面に応じて最適な器を作り分ける姿勢は、まさに「器は料理の着物」という信念の実践だったと言えるでしょう。
魯山人の器に共通する特徴として、緻密で神経質な作り込みよりも、大らかでゆったりとした造形が挙げられます。料理が盛り付けられ、使う人の手に渡ることを前提に作られているため、鑑賞専用の美術品とは異なる、独特のおおらかさが感じられるのも魅力の一つです。
緑和堂で実際にお取り扱いした魯山人の器
緑和堂でも、これまで魯山人が手がけたさまざまな器をお譲りいただいてきました。土瓶や湯呑といった日常使いの器から、備前キヌタの花入、黄瀬戸の四方鉢、信楽の木の葉平向、菓子器まで、技法・用途とも幅広い作品を取り扱ってまいりました。同じ「魯山人の器」といっても、産地や技法、制作年代によって表情がまったく異なるのも、この作家の面白いところです。
北大路魯山人という人物についてもっと詳しく
魯山人の器の価値や買取相場の考え方
魯山人の器の価値は、世の中での需要と供給のバランスに大きく左右されます。向付や小皿、湯呑など、もともと数多く制作された器は流通量も多く、保存状態の良いものが継続的に市場に出てくるため、相場は比較的落ち着いた水準にあります。一方で、大ぶりの鉢や花入、意匠性の高い作品など、制作数自体が少なかったものは、経年による損失もあって現存数が限られており、需要に対して供給が少ないため、相場も高くなる傾向があります。
北大路 魯山人の最近の買取実績
高値で取引されやすい器の特徴
珍しい意匠や奇抜な造形よりも、誰が見ても魯山人の作風だと分かるような、いかにも魯山人らしい器が高く評価される傾向にあります。また、共箱(作者自身が桐箱に作品名と署名を記した箱)の有無も重要なポイントです。魯山人は書家としても優れた腕を持っていたため、その筆致による箱書きは、器そのものの価値を裏付ける重要な要素になります。
なお、魯山人の器の価値や買取相場について、作品全般(陶芸・書画・漆芸など)を含めたより詳しい考え方は、以下でも紹介しています。
買取相場について、作品全般でさらに詳しく
北大路 魯山人の参考買取価格
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北大路魯山人 紅葉 色紙参考買取価格 100,000円 -
北大路魯山人 『備前キヌタ 花入』 友斎箱参考買取価格 800,000円 -
北大路魯山人『備前 土割山椒 鉢』参考買取価格 800,000円 -
北大路魯山人『土瓶』参考買取価格 300,000円 -
北大路魯山人 『信楽 木の葉 平向』参考買取価格 600,000円 -
北大路魯山人 作『菓子器』参考買取価格 130,000円
※参考買取価格は当日の価格であり、その価格を保証するものではありませんので予めご了承下さい。
※状態や付属品の有無、買取方法などによって価格が変動いたします。
器を手放す際に確認しておきたいポイント
ご自宅に魯山人の器がある場合、手放す前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。まず共箱の有無です。共箱に書かれた署名や作品名は、真贋の判断材料になるだけでなく、その器が魯山人自身によって「世に出す価値がある」と認められた作品である証でもあります。ただし、魯山人の筆跡を模した偽の箱書きも少なくないため、共箱があるからといって安心はできません。 逆に共箱がないからといって、真贋を判断できないというわけではありません。魯山人作品を数多く扱ってきた黒田陶苑による「識箱(鑑定箱)」が添えられているものがあり、これも真贋や来歴を判断するうえで重要な手がかりとなります。
また、使用歴のある器についても、査定・売却は十分に可能です。星岡茶寮などで実際に料理を盛り付けて使われていた器も多く、多少の使用感があることは珍しくありません。ひび割れのように見えても、焼成時にできた自然な貫入(釉薬の細かいひび)である場合もあるため、ご自身で判断せず、まずは専門家にご相談いただくことをおすすめします。
器の汚れが気になる場合も、薬剤で拭いたり、桐箱を自己判断で補修したりするのは避けてください。かえってシミの原因になったり、箱書きが薄れてしまったりすることがあります。
まとめ|器は、魯山人という芸術家の集大成
料理を引き立てるために自ら器を作り始めた魯山人にとって、器は単なる工芸品ではなく、書・篆刻・絵画・料理といった、それまでに培ったすべての美意識が注ぎ込まれた集大成でした。技法や形の幅広さも、様式にとらわれず最適な一枚を追求し続けた結果です。ご自宅に眠っている器がある場合は、その一枚にもこうした背景があるかもしれません。
北大路魯山人について知りたい方はこちら





















