
鑑定の仕事柄、魯山人が多才な芸術家だったことはよく知っているつもりだったのですが、随筆を読み込んでいくと、書や陶芸以上に、料理への向き合い方がすごかったんじゃないかと思うことがあります。今回は随筆「美味放談」「料理メモ」から、その執着ぶりと実践的なコツを紹介します。
食への執着を物語るエピソード
随筆「美味放談」には、魯山人の食への執着ぶりが伝わるエピソードがいくつも出てきます。朝鮮に滞在していた頃、知人からそんなに美味しくても一カ月と食べ続けるのは無理だろうと言われた牛肉を、なんと半年間食べ続けたと本人が語っています。また、ふぐが好物だったようで、十日ほど続けてふぐを食べていたところ、知人から体の匂いでふぐを食べ続けていることを言い当てられたというエピソードも残しています。
上京したての若い頃には、二百種類ほどのマカロニを出す洋食屋に通い詰め、「僕は毎日違ったのを作らせては毎日食ったもんだ」というほど。店側が根を上げるほどの通いぶりだったそうです。骨董品の目利きでも妥協を許さなかった魯山人らしさは、若い頃の食生活からすでに顔をのぞかせていたのかもしれません。
随筆から学ぶ、食材選び・食べ方のコツ
「料理メモ」には、魯山人が実践していた具体的なコツも数多く書き残されています。野菜については「極力新鮮を採れ、畑からじかが一等」「名高き野菜も古くては無名の新鮮に劣る」と、産地のブランドよりも鮮度そのものを重視する姿勢が徹底しています。
ふぐについては「美食はふぐにとどめを刺す。その証拠にはふぐが出ると他のものは食えぬ」と言い切るほどの絶賛ぶりで、先ほどのエピソードとあわせて、相当な思い入れがあったことがうかがえます。
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そばの美味い食べ方
そばについても、魯山人らしい持論が「美味放談」に残されています。「そばを味わうので大切なことは、少しずつつるっつるっとやるんでなしに一度にたくさん頬張って、ぐうっとそばが喉をこすって入るように食べるんだね」とのこと。少しずつ上品にすするのではなく、喉ごしをまとめて味わうのがそばの醍醐味だ、という持論のようです。
こうした食への執着は、器へのこだわりにもそのままつながっています。
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まとめ|食通を超えた、食への執着
半年間同じ肉を食べ続け、十日間ふぐを食べ続け、二百種類のマカロニを食べ尽くす。こうしたエピソードを読むと、魯山人の食への執着は「食通」という言葉では収まらないレベルだったことが分かります。それでいて、新鮮さを最優先する姿勢や、そばの喉ごしにまでこだわる感覚は、今の私たちの食生活にも通じるところがあるのではないでしょうか。
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