上村淳之は京都出身の花鳥画を得意とする日本画家で父も同じく花鳥画で有名な上村松篁、さらに祖母は美人画で有名な日本画の巨匠、上村松園であり、三代に渡り美しい作品を制作されています。
淳之の作品は繊細に美しく描かれた花鳥画が特徴的であるといえます。父・松篁も鳥を愛した画家であり、飼育と観察を行うことで繊細で美しい活力のある鳥たちが描かれています。
今回の作品の題名でもある尉鶲(ジョウビタキ)は冬になると街中でも見られる冬鳥を代表する鳥です。またヤマザクラの花のついた枝にとまっていることから4月上旬頃の林の中、北に向かって渡る直前となります。
ジョウビタキにとって春の報せは恋の季節と共に、おとずれる厳しい旅の始まりを意味し、”喜び”と”憂い”の相反する気持ちを同時に表現しているようにも感じられ、背景の少し沈んだ色も「桜の花」という明るいイメージのモチーフとの対称にもなっており、春のムズ痒い何とも言えない気持ちを呼び起こされる作品です。
上村淳之の作品は原画を元にした木版画などをよく目にしますが、こちらは原画作品であり、劣化もほとんど見られず共シールや共箱も揃っていることも加味して上記の評価額としております。