今回ご紹介する作品は、前田正博の『色絵酒器』という作品です。
ガラス質の少ない洋絵具を用いた「色絵洋彩(いろえようさい)」という装飾技法で制作しており、磁土をロクロで成形し、本焼きした後にマスキングテープと洋絵具を用いて上絵付を施しています。伝統的な和絵具では表現できない、絵画的な装飾効果に大きな特徴がある作家です。
彼は人間国宝(重要無形文化財保持者)である藤本能道に師事し、東京・六本木に工房を構え、長年にわたり独自の磁器を追求してきました。茨城県立笠間陶芸大学校の顧問や日本伝統工芸展の鑑審査委員といった要職も歴任しています。2024年には、地域文化の振興への貢献から文部科学大臣より「地域文化功労者」として表彰され、日本の伝統工芸の発展に大きく貢献しています。
本作は、色絵洋彩の技法で制作されたぐい呑です。マスキングテープを用いて洋絵具を塗り重ね、シャープな縦縞の幾何学模様を表現しており、かすれ感のあるラインが規則正しくも温かみを感じさせます。上半分は鮮やかでありながら深みのある赤、下半分は全体を引き締めるマットな黒(または紺)で構成されており、この対比をなすツートンカラーの意匠が、前田特有の魅力を凝縮したお品物となっています。
こちらの作品は、保存状態も良好で、加えて共箱・共布が付属していることから、上記評価額となりました。