皆様こんにちは緑和堂東京支店です。
本日ご紹介する作品は、砂澤ビッキの木彫り作品「駄津」になります。
作者の砂澤ビッキは、1931年アイヌの両親のもとコタン(現旭川市)で生まれ、22歳の頃に木彫を始めました。アイヌ民族というアイデンティティを生かし、自然を感じられ木と深く対峙しながら生まれる作品は、繊細さの中に豪快さを感じられるビッキ節が特徴です。もう一つの特徴としてビッキ文様と呼ばれるものがあります、渦巻の形など伝統のアイヌ文様に緑の顔料を練りこんだ作品がビッキ文様と呼ばれています。ブロンズのように見える群青色が特徴的で独特な雰囲気を醸し出しています。
砂澤ビッキが持つ作品テーマは自然であり、生き物をモチーフにすることが多く、トンボなどの昆虫や鰈などの魚を題材にした作品を多く作り上げています。
砂澤ビッキの自然にこだわる様は、作品作りだけではなく生き方や考え方にも表れており、自然が起こした事象についてはあるがままを受け入れ、強風で倒れた自身の作品は倒れたままにするなど、自然にゆだねるといった考え方を持っています。
砂澤ビッキの逸話にこんなものがあります、砂澤ビッキ作品展を開催することになり業者が作品をトラックで運んでいる際、運転手が窓から捨てたタバコが荷台の作品に当たり焦げがついてしまいました、焦げを付けたドライバーはひどく落ち込んでいましたが、作者の砂澤ビッキは「焦げが付いた作品もいいじゃねえか」と一言、こんな出来事も自然であるといわんばかりの対応をとったのです。砂澤ビッキにとって人を介して起きる事象も自然の一部ととらえているように感じます。
砂澤ビッキの考え方は本人の死後も影響を及ぼしており、砂澤ビッキのアトリエに野ざらしにされている作品を保護するべきという意見と、そのままの姿こそが作品であるという意見に割れるといったこともありました。
そんな自然を愛する砂澤ビッキが作った今回の作品「駄津」は、60センチ程ある大型の作品で、魚が泳ぐ様を表すかのように可動するつくりとなっています。ビッキが作る魚の作品の多くは鰈をモチーフにしており、駄津をモチーフとした作品は珍しい作品といえます。これは余談にはなりますが、下顎が伸びているのは実は駄津では無くサヨリという魚なのですが、そのあたりも砂澤ビッキの豪快さといえる気がします。今回の作品のビッキ文様も細かく彫られており、特徴的な群青色が濃く表れており、独特な雰囲気を醸し出す砂澤ビッキらしい作品となっています。 駄津モチーフの作品ということ、大型の作品であることを加味して今回の作品は上記のように高い評価額となりました。