草間彌生は1929年、長野県松本市に生まれました。幼少期から幻覚や幻聴に悩まされており、それらの現象から逃れるために、幻覚や幻聴を絵に描き始めたことが画家としての道を歩むきっかけとなりました。
1957年には渡米し、絵画や立体作品の制作に加えて、1950〜1960年代に欧米で流行していた「ハプニング」と称される過激で一回限りのパフォーマンスを行いました。その活動を通じて、1960年代には「前衛の女王」とも呼ばれるようになります。
1973年まではアメリカを拠点に活動していましたが、体調を崩したことから帰国。その後は小説などの執筆活動にも取り組んでいます。1993年からは芸術制作を本格的に再開し、「わが永遠の魂」シリーズの制作をはじめ、日本企業のみならず海外のハイブランドとのコラボレーションも行い、現在に至るまで精力的に創作活動を続けています。
今回は、草間氏が2000年に制作した『永遠の愛』より、『表紙 Infinity Nets』をご紹介させていただきます。『永遠の愛』は、ラメ加工が施されたリトグラフ10点を収録した、限定60部の貴重な作品集です。
その表紙を飾るのが『Infinity Nets』であり、赤く染められた革にエンボス加工(浮き彫り加工)が施された作品です。エンボス加工とは、紙や革などに凹凸のある立体感を与える技法を指します。『Infinity Nets』は、草間氏が1959年にマンハッタンで個展を開催した際に初めて発表されたシリーズであり、以降も草間作品の中で繰り返し用いられている重要なモチーフです。
また、作品集には草間氏がこの作品を制作するにあたっての思いや制作過程について記された文章も収録されています。
今回の評価は、貴重な作品集の表紙であること、大切に保管されていたことがうかがえる保存状態の良さ、そして草間氏が現在も国内外で高く評価され続けている点を総合的に勘案した上でのものとなっております。
今回は10種中の4作品を同時にお譲りいただいております。他作品の紹介も拝見いただけますと幸いです。