池田 省吾『粉引竹林茶碗』

池田省吾は、川添貞秀に師事した後、全国各地で個展やグループ展を多数開催し、精力的に創作活動を展開してきました。2000年以降は種子島に拠点を移し、種子島の土を生かした独自の織部をはじめ、粉引、焼締、唐津風など多様な技法を駆使して、土味を活かした独創的な作品を生み出しています。

本作は、竹林の中を虎が走り、刀を手にした人物が逃げるという、動きのある構図が印象的です。力強い筆致で描かれた虎は、今にも画面から飛び出してきそうな迫力があり、鑑賞者に緊張感と物語性を感じさせます。伝統的な題材をユーモアを交えて描写しており、粉引の素朴な風合いと、軽快で洒脱な絵付けが調和し、独特の魅力を放っています。

共箱付きで保存状態も良好であることから、総合的に高い評価を得て、今回の査定結果となりました。