建窯は、宋時代に主に日用陶器を制作していた窯元ですが、特に天目茶碗の制作で知られています。
鉄分を多く含む釉薬を使用し、高台まで釉薬が垂れ、溜まる部分が見どころの一つとなっています。なかでも曜変天目や油滴天目の一部は、日本で国宝に指定されており、その芸術性の高さが評価されています。
建窯の天目茶碗は、1393〜1598年の間に中国から日本へ伝来しました。その中には国宝に認定されているものもあり、現在でも多くのコレクターに支持され、高い評価を受けています。
天目茶碗の価値を決める重要な要素の一つに、「模様の美しさ」があります。黒釉のシンプルなものに比べ、禾目(のぎもく)、玳瑁(たいまい)、油滴、曜変といった模様が施された作品のほうが、より高く評価される傾向にあります。
しかし、近年に安価で大量生産された、ギラギラと輝く天目茶碗は落ち着いた評価になります。
今回の天目茶碗は、黒釉の中に鈍く輝く結晶が美しく現れた見事な作品です。油の滴のような模様が特徴で、「油滴天目」と称されています。見込み(茶碗の内側)にも美しい結晶が見られ、特段の傷や汚れがないため、高い評価となっています。